P25-26 : シロアリ腸内細菌の網羅的な群集構造解析と比較解析
Posted On 20 10月 2014
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1東京工業大・院生命理工, 2長崎大・院水産・環境科学, 3理研・BRC-JCM, 理研・CSRS BMEP, 理研・長田抗生物質
【背景・目的】シロアリは植物枯死体を餌とするが、その分解のほとんどは腸内に共生する微生物群集が担う。これは原生生物・真正細菌・古細菌からなる複雑な共生系で、シロアリの生存に必須であるが、分離培養が困難なため、系統分類・生理・生態に関する知見は未だ不十分である。そこで本研究では、多様なシロアリ種の腸内細菌について網羅的な群集構造解析を行い、宿主シロアリの系統・食性・地理的分布と腸内細菌群集の関係を明らかにし、共生関係の進化について考察した。【方法】世界各地で採集した60種以上のシロアリおよびゴキブリについて、全腸からDNAを抽出した。各サンプルについて真正細菌の16S rRNA遺伝子を標的としたPCR増幅を行い、サンガー法で約100本ずつ全長配列を取得した。さらにIllumina MiSeqを用い、各サンプル数万~数十万本ずつ大量の部分配列を取得した。これらをもとに、腸内細菌の群集構造解析と比較解析を行った。【結果・考察】対象とした全てのシロアリでSpirochaetales目、Bacteroidales目、Clostridiales目が優占的であり、各分類群内でシロアリ・ゴキブリ特異的単系統群を形成した。各サンプルの細菌群集構造は、系統的に近いシロアリ同士で類似していたが、高等シロアリでは亜科レベルの系統よりも、食性が同じシロアリ間での類似が見られた。また、地理的分布による特定の傾向は見られなかった。以上より、シロアリの腸内細菌群集は基本的に垂直伝播で祖先から受け継がれてきたものであり、高等シロアリでは食性等の生態が変わるに伴い、その組成に変化が生じてきたことが示唆された。
keywords:シロアリ,腸内細菌,共生,群集構造解析,昆虫