P25-28 : ホソヘリカメムシ腸内に発達する糖タンパク質とBurkholderia定着の関係
Posted On 20 10月 2014
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1北海道大・院農, 2産総研・バイオマスリファイナリー研究センター, 3産総研・生物プロセス部門, ,
多くの動植物は体内に共生微生物を持つが、共生成立のメカニズムには不明な点が多い。幾つかの共生系において、宿主と共生微生物の相互認識に細胞表面の糖タンパク質が重要な役割を果たすことが知られている。ダイズの重要害虫として知られるホソヘリカメムシは、成長の過程でBurkholderia共生細菌を環境土壌中から取り込み、中腸に発達する袋状組織(盲嚢)内に保持することが知られている。しかし、土壌中に生息する数十万種もの細菌の中からなぜ特定の細菌のみが盲嚢内に定着するのか、その分子基盤については殆ど分かっていない。本研究では、ホソヘリカメムシ腸内共生系の成立において盲嚢内に発達する糖鎖構造が果たす役割を解析したので報告する。異なる糖鎖に特異性を持つ蛍光標識レクチンを複数用いて感染および非感染虫の盲嚢組織切片を染色したところ、非感染虫の盲嚢内腔にSBA(大豆レクチン)やIB4(パンディラマメレクチン)のみで染色される糖鎖が特異的に発達することを発見した。この糖鎖構造を解析するために非感染虫の盲嚢を破砕しSDS-PAGE後にSBAを用いてレクチンブロッティングをしたところ、分子量の異なる糖タンパク質のバンドが3本検出された。その1つはホソヘリカメムシが共生細菌を獲得する2-3齢をピークにその後大きく発現量が減少していたことから、共生成立に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。講演ではさらに、レクチンアフィニティークロマトグラフィーによる糖タンパク質の精製や目的タンパク質のアミノ酸配列についても報告予定であり、ホソヘリカメムシ共生系の成立において糖タンパク質が果たす役割について議論する。
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