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P23-3 : 微好気条件でのみ硝酸還元・亜酸化窒素生成(N2O)を行う新規海洋細菌
Posted On 20 10月 2014
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1産総研, 2東京大学, 3富山大学, 鹿児島大学, 中央大学
亜酸化窒素(N2O)はオゾン層破壊や地球温暖化の原因であることから,その生成や消費に関与する微生物の同定と生態の解明は重要である。海洋においてしばしば観測される酸素極小層でのN2O濃度の極大には,硝化細菌が主に関与していると考えられている。一方で,一部のバクテリアは好気や微好気条件で脱窒し,N2O生成も報告されていることから,海洋の好気・微好気環境におけるN2O生成に脱窒反応が関与する可能性が示唆される。しかし,海洋における好気・微好気脱窒反応はほとんど知られておらず,その重要性も未知である。我々は,鹿児島湾の海底堆積物から微好気条件でのみ脱窒を行い,N2Oを生成する新規微生物,MA2株を分離した。MA2株は,様々な有機物を利用する従属栄養細菌であり,好気・微好気条件で増殖するが,嫌気条件で硝酸や亜硝酸を電子受容体として増殖することはできなかった。N2O生成は微好気条件でのみ生じ,窒素生成は確認されなかった。MA2株の全ゲノム解析の結果,脱窒にはperiplasmic nitrate reductase (nap) が関与すると考えられた。16S rRNA遺伝子解析に基づく分子系統解析では,MA2株はαProteobacteriaのRhodobium, Parvibaculum属と92-93% の相同性を示した。生理性状試験の結果とあわせ,MA2株は新属新種と考えられた。近年の地球温暖化に伴い,海洋の酸素極小層は拡大していると考えられていることから,微好気環境でのN2O生成プロセスをさらに評価する必要がある。
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