P21-18 : 海水温上昇が海洋沿岸におけるウイルスによる原核生物制御へ与える影響
Posted On 20 10月 2014
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1静岡大学大学院理学研究科, 2静岡大学創造科学技術大学院, 3, ,
海洋においてウイルスは溶菌性感染によって原核生物を死滅させることで,原核生物群集の数と構成を制御する(Suttle, 2007).また,ウイルスのバーストサイズや感染様式は宿主の生理状態や密度に大きく依存する(Weinbauer, 2004).そのため,海水温上昇が原核生物の活性を高めることはウイルスの原核生物制御に影響を与えると予想される.しかし,海水温上昇がウイルスの原核生物制御に与える影響についての報告は数少ない.そこで本研究では,海水温上昇がウイルスによる原核生物群集の(1)数と(2)構成への制御や,(3)バーストサイズ,(4)感染様式にどのように影響するかを推測することとした.駿河湾沿岸の表層から海水を採取し,現場温度と現場温度+3/5℃,現場温度+5/10℃で培養実験を行った.(1)ウイルスによる原核生物群集の存在数の減少は高水温時により大きくなった.(2)ウイルス感染がより頻繁な培養区において,現場温度では原核生物群集中のAlphaproteobacteriaの割合が減少した,現場温度+5℃ではGammaproteobacteriaの割合が減少した.また,高水温時に(3)バーストサイズはより高い値を示し,(4)溶菌性感染によるウイルス生産が増加し,mitomycin C添加により評価した溶原性感染によるウイルス生産が減少した.海水温上昇は,バーストサイズの増加や溶原性から溶菌性への切り替えの誘発を引き起こすことで,ウイルスによる原核生物群集の数の減少を増加させたと考えられる.また,海水温上昇はウイルスによる原核生物群集の構造の変化に影響を与える可能性が示唆された.
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