O33-05 : 東北大地震の津波による土壌微生物の多様性変化及び環境適応
Posted On 20 10月 2014
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1東大・院・新領域, 2東大・院・理 , 3東大・大気海洋研, ,
2011年3月11日、日本の東北沖で発生した地震は、東北地方の太平洋沿岸の広い地域に大規模な津波を引き起こした。この津波によって大量の海水や海底泥が海から陸上に巻き上げられた結果、土壌中の塩分や有機物量、硫酸イオン濃度、一部の金属含有量等が上昇したことが報告され、土壌に生息する微生物を取り巻く環境は大きく変化したと考えられる。しかしながら、微生物の多様性がどのように変化し、環境適応にどのような遺伝子が関わっているのかについては、詳しく調べられていない。そこで、宮城県仙台市内の海岸線付近の砂地から東日本大震災による津波を被って一年半経過した土壌を採取し、土壌成分分析と土壌メタゲノム解析を行い、津波による微生物多様性の変化の観測と、津波後の環境に適応した微生物の探索を行った。さらに、津波土壌に適応した微生物として4株のArthrobacter属細菌の単離とゲノム決定を行い、近縁種との比較ゲノム解析から環境適応に関わる遺伝子の同定を行った。
結果、津波土壌の微生物群集構造では非津波土壌と比較して硫酸還元細菌や脱窒細菌の割合が大きくなっていることが分かり、全体としてより海洋的な群集構造をにシフトしていることが示唆された。また、津波土壌単離株はシデロフォア合成遺伝子を欠失していることが分かり、鉄吸収能力が低下していることが示唆された。これらの傾向は、津波による土壌中の鉄や硫酸イオン濃度の上昇の影響を受けたものであると考えられる。本研究は、津波による土壌の環境変化に、微生物が適応進化している可能性を示す。
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