微生物生態学会39巻1号 ハイライト

総説 微生物間相互作用から考える未培養微生物の培養戦略  鈴木 陸太、青井 議輝 本報では、微生物間の相互作用とその重要性について詳しく説明している。特に、「多くの微生物はなぜ培養できないのか?」という疑問を、「これまでの培養手法ではなぜ培養できなかったのか?」という視点で考えることで、微生物間相互作用を軸にした新規培養手法の開発と実証について概説している。 Biomass 4.0:微生物による脱光合成型CO2 資源化技術の可能性  加藤 創一郎 従来の光合成に代わる次世代型CO2資源化技術「Biomass 4.0」を詳細に解説している。非光合成微生物とマテリアル

微生物生態学会38巻2号 ハイライト

扉を開く Crossing cultures in interdisciplinary microbiology  Jackson M. Tsuji (JAMSTEC) 小学生の時にイエローストーン国立公園でダイナミックな地球の活動に感銘を受け、その後カナダのWaterloo大学で博士号を取得したTsuji先生。学術振興会特別研究員として来日し、現在はJAMSTECの若手研究員として研究を続けています。International Symposia on Microbial Ecology(ISME)で得た貴重な経験、異なる研究室ごとの微妙な違いに適応するためのコツ

微生物生態学会38巻1号 ハイライト

総説 Candidate phyla radiation (CPR)/Candidatus Patescibacteriaの実態を廃水処理システムの視点から理解する 黒田 恭平,成廣 隆,藤井 直樹,中島 芽梨,景政 柊蘭,中井 亮佑,佐藤 久,久保田健吾,金田一智規 本報では主に廃水処理システムに生息するCandidatus Patescibacteriaを対象とし,フィルターろ過による濃縮技術の開発,rRNA 情報を利用した Ca. Patescibacteria の評価技術の開発,ショットガンメタゲノム解析に基づく生態学的機能の推定,培養法に基づく新奇な寄生

微生物生態学会37巻2号 ハイライト

リサーチ最前線 ミクルアーキアの最前線  酒井 博之 アーキアが優占する数少ない自然環境の1つである陸上の酸性温泉から分離・記載されたアーキアはわずか40種程度である。ご自身で培養に成功したこれまでの定説を覆す生理生態を持つ寄生性新奇アーキアを含むDPANN群とミクルアーキアの最前線について,酒井博士にご紹介いただきました。 ナノアーキア研究の現状と展望  加藤 真悟  理化学研究所 そのほとんどが未培養であることから「微生物ダークマター」の代表格といえるDPANNアーキアの中でも特に「Nanoarchaeota」に属するナノアーキアに焦点を絞り,培養によって明ら

微生物生態学会37巻1号 ハイライト

総説 機能未知遺伝子の機能を推測するバイオインフォマティクス:AlphaFoldから遺伝子誕生学へ  岩崎 渉 東京大学 バイオインフォマティクスという言葉が定着した1990年代から現在に至るまで,シーケンス技術の急速な進化や公共データベースの拡充,ディープラーニング技術を用いてアミノ酸配列からタンパク質の立体構造を極めて正確に予測するソフトウェアAlphaFoldの登場など,21世紀の生物学分野における革命的な変化について本稿では著者らが明らかにしてきた研究成果の一部とともに概説する。 ゲノムから読み解く細菌間コミュニケーションの多様性  諸星 知広,櫻岡 良平

微生物生態学会36巻2号 ハイライト

扉を拓く – 活躍する若手 微生物ダークマターを培養する         片山 泰樹(産業技術総合研究所) 候補門’Atribacteria’(旧名OP9)に属する細菌の純粋培養に初めて成功し,2020年12月にNature Communications誌で発表された片山先生に,いかにして微生物ダークマターたる候補門の扉を拓いたかについてご紹介いただきました。 世代を超えて 走馬灯のように                犬伏 和之 嫌気性菌におけるメタン生成と硫酸還元の競合関係など、水田土壌微生物の研究を牽引してらした犬伏先生に,フィリピンにある国際稲

微生物生態学会36巻1号 ハイライト

総説 共生研究のためのモデル系:ホソヘリカメムシと Burkholderia の魅力竹下 和貴,石神 広太,Jang Seonghan,菊池 義智 多くの昆虫の体内外に存在している共生微生物は,不足する必須栄養素の供給など宿主昆虫の生存に必須の役割を果たしている。中でも絶対共生微生物は,ゲノム情報が気軽に利用できるようになった現在でも培養が困難である。本稿では,ホソヘリカメムシ-バークホルデリア腸内共生系モデルを用いて著者らが明らかにしてきた研究成果の一部を紹介する。 特集 新型コロナウイルス対応社会における研究のあり方を模索するキャリアパス・ダイバーシティ推進委

微生物生態学会35巻1号 ハイライト

リサーチ最前線(第33回山梨大会の優秀ポスター賞受賞者からエディターズチョイス) ラッソペプチドの生合成機構の解明を目指して          澄田 智美 特徴的な“投げ縄”構造を有するラッソペプチドは,貧栄養環境下において微生物が生産する抗生物質の一種である。本研究では,ラッソペプチドの合成酵素群のうち生合成経路の第1段階で働くLasB1についてX線結晶構造解析を実施した。 共生細菌のゲノム縮小進化を駆動する要因            金城 幸宏 本稿では,共生細菌を対象にゲノムから遺伝子が失われて単純化していくゲノム縮小進化についてご自身の昆虫の細胞内共生細菌

微生物生態学会34巻2号 ハイライト

総説 付加体深部帯水層での微生物メタン生成とエネルギー生産システムの社会実装 木村 浩之,松下 慎,芦沼 完太,津布久 卓也 日本において,東日本大震災の原子力発電の停止により約8%まで低下しているエネルギー自給率を2030年までにある程度回復させるために,新たな科学的知見と技術開発が求められている。本稿では,西南日本の太平洋側の地域に広く分布する厚い堆積層の深部帯水層に存在する大量のメタンに着目し,地球科学と微生物生態学を融合させた研究成果からメタン生成メカニズムを解説するとともに,付加体の深部帯水層に由来する地下水,付随ガス,微生物群集を活用したエネルギー生産

微生物生態学会34巻1号 ハイライト

リサーチ最前線(第32回沖縄大会の優秀ポスター賞受賞者からエディターズチョイス) water-in-oil エマルションがもたらす新規微生物へのアプローチ  斉藤 加奈子 自然環境中の99%以上と見積もられている未培養の微生物を単離培養して産業的・学術的なさらなる発展へと繋げることを目指し,本研究ではwater-in-oil エマルションを利用した微生物のハイスループット培養・分取技術の開発に取り組んでいる。 エンドサイトーシス獲得への道のり     柿澤 侑花子 エンドサイトーシスやファゴサイトーシスは真核生物特有の現象であり,原核生物では報告例がない。そこで,

微生物生態学会 33巻2号 ハイライト

総説 ベシクルから視えてくる細菌間相互作用の姿  豊福 雅典,森永 花菜,安田まり奈,野村 暢彦 単細胞生物である細菌の研究が進むにつれ,多細胞生物とは異なった独自で多様な生存戦略を持っており,考えられていたよりも細菌は“賢い”ことや我々の予想以上にダイナミックな生活環を送っていることが明らかとなっている。動物細胞におけるエクソソームに類似した,細胞外に膜で構成される微小粒子(メンブレンベシクル:MV)を細菌も放出していることが50年以上も前から明らかとなっている。細菌が放出するメンブレンベシクルの機能が次々と解明される一方で,一番根本的なMVの形成機構については

微生物生態学会 33巻1号 ハイライト

リサーチ最前線(環境微生物系学会合同大会2017の優秀ポスター賞受賞者からエディターズチョイス) 植生回復が進む三宅島2000 年噴火後の土壌形成過程における微生物学的解析  海老原諒子(茨城大学) 東京の南に位置する火山島である三宅島では,2000年の大噴火で大量の火山灰堆積物が放出され噴火前の生態系は埋没した。土壌形成過程において植物は光合成産物の供給源となり,土壌の有機物蓄積に寄与することから,三宅島の植生回復は火山灰堆積物中の微生物生態系に影響を及ぼすと考えられる。調査地の中で植生回復が著しい地点では,火山灰堆積物上の土壌A層の形成が確認された。植生回復が
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