和文誌新着記事

微生態和文誌30巻2号 ハイライト

総説

メタゲノム情報を基盤とした土壌細菌コミュニティの解析  加藤 広海、小川なつみ、津田 雅孝

微生物は地球上の広範な環境に棲息し,各環境に特有なコミュニティを形成しながら,生態系にとって必須な機能の根幹を担っている。近年のシーケンス技術の向上および低コスト化によって,世界的規模で環境メタゲノムデータが爆発的に蓄積されている。それら環境メタゲノムデータの比較によって,我々にとって最も身近な存在である土壌環境が地球上で最も微生物多様性に富んだ環境であることがわかってきた。これら莫大な多様性を持った微生物コミュニティは,メンバー間で互いに密接に関わり合いながら,物質循環だけでなく環境汚染物質浄化など,様々な土壌機能を支えていると予想される。筆者らの研究室では,閉鎖系の汚染土壌のメタゲノムを経時的に比較し汚染に対する遺伝子プールの変動様式を解析した結果,土壌微生物生態系が化学物質による一時的な撹乱に対してロバスト性(外的・内的撹乱に抗って機能を維持する性質)を有していたことが判明した。一方で,このような環境サンプルは“再現性”や“普遍性”を議論しにくいため,何らかの実験系で検証しその取得情報とメタゲノムデータを関連づける必要がある。本稿では,(1)添加汚染物質分解における微生物間の協調的関係,および(2)土壌撹乱の後に菌叢が元に戻る現象について,当該土壌から回収した細菌(群衆)を用いた実験系で得られた成果をメタゲノムデータと照合しながら紹介する。

微生物のシングルセルゲノミクス研究の現状と未来  モリ テツシ

自然界は様々な特殊な環境から成り,その中では多様な微生物がその環境に合った特有な生態系を構成し共存することで環境や生態系を維持するための重要な役割を担っていると考えられる。しかしながら,環境中の微生物の99% 以上は難培養微生物(未知・新種を含む)と言われており,従来の培養技術に依存した解析ではこれらの微生物にアクセスすることが困難だった。そこで,培養技術に依存しないアプローチである,メタゲノミクスが考案され,難培養微生物叢の機能に加えて生態系や環境中における微生物の影響などを理解することもできるようになった。しかしながら,メタゲノミクスでは様々な微生物のゲノムをミックスした情報が得られるため,個々の微生物の生態系内での役割を明確に知ることは不可能であった。このような背景の中,2004 年にRoger Lasken 率いる研究グループが世界で初めて大腸菌の単一細胞からゲノムを解読することに成功し,ここから微生物を対象としたシングルセルゲノミクス(SCG)が一気に開花した。本総説では,SCG の発展の流れや応用例をあげながら,SCG の最新の取り組み,今後の課題や展望について紹介する。

 

リサーチ最前線

植物共存細菌の多様性を正しく評価する技術イノベーション  池永 誠、境 雅夫

植物の表面や内部に生息する細菌(植物共存細菌と呼ぶ)の多様性を迅速かつ簡便に解析する方法は未だ確立されておらず,その活用研究は遅れている。とりわけ植物共存細菌のSSU rRNA 遺伝子をPCR増幅して多様性を解析する分子生態学的研究においては,宿主植物に由来するオルガネラ(ミトコンドリアおよびプラスチド)の遺伝子が過剰に増幅され,植物共存細菌の多様性が過小評価される重大な問題が存在する。そこで,この問題に対してブレイクスルーとなり得る新技術,すなわち「PCR 過程においてオルガネラ遺伝子の増幅を抑制する一方で,植物共存細菌の遺伝子を選択的に増幅する技術」を,Locked Nucleic Acid(LNA)を含むオリゴヌクレオチド(LNA オリゴ)によるPCR クランプ技術を適用して開発したので,そのメカニズムと効果について紹介する。

微生態和文誌30巻2号

9月1日発行号 目次

総説

メタゲノム情報を基盤とした土壌細菌コミュニティの解析 加藤 広海、小川なつみ、津田 雅孝

微生物のシングルセルゲノミクス研究の現状と未来            モリ テツシ

リサーチ最前線

「植物共存細菌の多様性を正しく評価する技術イノベーション」  池永 誠、境 雅夫

 

扉を拓く - 活躍する若手

・つくばからチューリッヒ,そしてつくば,またチューリッヒ                                                            豊福 雅典

微生物の生態を理解する上で、個々の細胞どうしが集団内でどのような相互作用をしているのかを理解することは、その微生物集団の運命を左右する重要な現象です。今回は、バイオフィルム研究を皮切りに、メンブランベシクルを介した細胞間相互作用について研究を発展させてきた、筑波大学の豊福雅典博士にお話を伺いました。

・スイス・ローザンヌ大学への海外留学と現在の研究   宮崎 亮

バクテリア細胞集団における不均一性を理解することは、微生物の生態を理解する上で重要な視点として、高い注目を浴びています。今回はバクテリアの生理・適応・進化について、集団内での不均一性という視点から研究をされている、産業総合技術研究所の宮崎亮博士にお話しを伺いました。

 

世代を超えて

三つの失敗   小暮一啓 先生

微生物学の潮流   前田広人 先生

 

スポットライト:イケメン&イケジョ

vol.17  森 浩二

vol.18 永田 恵里奈

vol.19 野田 悟子

vol.20 玉木 秀幸

 

書評、会務報告、お知らせ 他

微生態和文誌30巻1号

2015年度 大会案内  大会への招待状 太田大会実行委員長

巻頭言 科学のネットワークを張り巡らせましょう    南澤会長

 

リサーチ最前線

1細胞ゲノム解析によるシロアリ腸内共生系の解明   雪 真弘、大熊盛也

 

環境微生物学系学会合同大会 浜松大会 ポスター賞受賞者紹介

M&Eハイライト Editor’s Choice (vol.29-3,4)

扉を拓く - 活躍する若手

ゲノム研究で世界をリードするJ. Craig Venter Instituteでの研究生活    鈴木志野

地圏微生物学のおはなし 〜論文投稿の厳しさと優しさ〜  真弓大介

一般ポスドクのMIT留学体験記:海外でしか得られない情報・技術なんてほとんどない時代に留学って必要?     吉澤 晋

第8回細菌学若手コロッセウム in ニセコ 参加報告         藤吉奏、楊佳約

 

世代を超えて

Die Welt und die Umwelt                               加藤憲二

多様性のハーモニー                                     平石 明

 

スポットライト:イケメン&イケジョ

vol.13 成澤 才彦

vol.14 鮫島 玲子

vol.15 金田一 智規

vol.16 大坪 和香子

 

国際学会見聞録

ISME 参加報告                                     成廣隆 伊地知稔 大林翼

6th KJT symposium報告      村瀬潤 大坪和香子 鈴木研志

 

アウトリーチシーン

学術交流と発信の現場から

多様性のある研究環境を目指して:微生物生態学会男女共同参画・ダイバーシティ推進委員会 活動報告

いま北の国がアツイ! 〜札幌微生物勉強会への招待〜 石井聡

書籍紹介 「環境と微生物の事典」

会務報告

お知らせ

第一回日本微生物生態学会奨励賞授賞候補者推薦の募集

第17回 マリンバイオテクノロジー学会大会開催のお知らせ

会則

微生物生態学会 30巻1号 ハイライト

リサーチ最前線 

1細胞ゲノム解析によるシロアリ腸内共生系の解明   雪 真弘、大熊盛也

シロアリは木材を餌とすることから害虫として扱われているが、熱帯林においては植物バイオマスの重要な分解者である。シロアリ腸内には、原生生物、古細菌、真正細菌が共生し、植物バイオマスの分解や窒素固定等を行っていることが知られている。さらに、原生生物の細胞内、細胞表面にも細菌が共生しており、多重共生系を構築している。しかし、共生するほとんどの微生物が難培養性であるため、培養を介さない手法による解析が必要であった。これまでに、メタトランスクリプトームやメタゲノム解析などの培養を介さない手法により、微生物群集全体の機能が明らかにされてきた。近年、様々な手法が開発され、細菌1細胞からゲノム解析を行うことが可能となり、環境中の難培養微生物のゲノム解析が世界中で精力的に進められている。本稿では、筆者らが行っているシロアリ腸内細菌の1細胞ゲノム解析の手法を中心に紹介する。

 

扉を拓く - 活躍する若手

ゲノム研究で世界をリードするJ. Craig Venter Instituteでの研究生活  鈴木志野

海外の研究機関で研究者としてのキャリアを積むということはどのような魅力や苦労がそこに伴うのでしょうか?今回は、アメリカのJ. Craig Venter Institute (JCVI)で活躍中の鈴木志野研究員にアメリカでの研究生活やご自身の研究内容である蛇紋岩水圏の地下生命圏についてお話を伺いました。(聞き手:広島大 青井議輝)

 

地圏微生物学のおはなし 〜論文投稿の厳しさと優しさ〜  真弓大介

温室効果ガスとして知られる二酸化炭素の削減方法として深部地下に貯留する、CO2 回収・貯留(CCS)技術が注目を集めています。今回は、CCS技術が深部地下油層環境の微生物生態系に与える影響について報告した、産業総合技術研究所の眞弓大介研究員に、地下圏微生物生態系の最新研究とその産業利用の可能性についてお話を伺いました。

微生態和文誌29巻2号 ハイライト

総説

空間行動から読み解く海洋微生物の種分化プロセス  八幡 穣

遊泳性・走化性・表面付着・バイオフィルム形成などの能力で、微生物は環境中を移動したり好ましい場所にとどまったりすることができる。こうした行動を「空間行動」と呼ぶことにしよう。微小な微生物の空間行動は微弱であり、共存や種分化といった進化的に重要な現象を駆動することは無い―とする考えがこれまでは主流だった。筆者らはこれをくつがえし、新しい技術を用いて微生物の空間行動を直接観察することで、空間行動が微生物の進化的生態(共生・種分化)の重要な要素であることを解明した。筆者らは、空間行動の分化が“競争力と移動力のトレードオフ (Competition-colonization tradeoff)”を創りだすことにより、種分化直後のV. cyclitrophicusの系統間での共存が達成されることを明らかにした。“競争力と移動力のトレードオフ”とは、近縁種の共存を空間行動の違いから説明する理論であり、動植物の行動生態学における基本的な原理の一つだ。こうしたマクロスケールの生態学で発展した動植物の共存を説明するための原理が、マイクロスケールの微生物にも適応できるとはこれまで考えられてこなかった。この発見を可能にしたのは、微生物の空間行動を直接観察するための新しい技術(マイクロ流体デバイス)である。こうした新技術と行動生態学のアイデア、そして集団ゲノミクスと分子生物学を融合させた研究結果から得られたモデルは、海洋細菌の種分化メカニズムがこれまで考えられていたものよりはるかにシンプルであることを示唆している。

 

細胞外電子伝達:固体を呼吸基質とする微生物たち  加藤 創一郎

すべての生物は生命を維持するため、さらには子孫を増やすために、エネルギーを獲得し続けなくてはならない。生物がエネルギーを得るための手段には、呼吸、光合成、発酵の3種類が存在する。いずれの場合も、根幹にあるのは物質の酸化還元とそれに伴う電子移動反応である。通常の生物は可溶性あるいはガス状の物質を細胞の外部から内部へ取り込み、細胞内でその酸化還元反応をおこなう。しかしある特殊な微生物は、不溶性・固体状の物質から電子を得る、あるいは電子を捨てることでエネルギーを獲得している。他の生物が利用できない固体物質をエネルギー代謝に利用できることは、その生物に対し生態的、進化的なアドバンテージを与える。一方で固体物質を利用するためには、ある特殊な分子機構を備えている必要がある。その特殊な分子機構こそ、本総説にて解説する「細胞外電子伝達」である。本総説では、微生物の細胞外電子伝達について、そのメカニズムと応用利用の可能性について解説する。

微生態和文誌29巻2号

9月1日発行号 目次

総説

空間行動から読み解く海洋微生物の種分化プロセス         八幡 穣

細胞外電子伝達:固体を呼吸基質とする微生物たち         加藤創一郎

リサーチ最前線

「嫌気性排水処理リアクターで起こる嫌気的硫黄酸化反応」  幡本将史、山口隆司

 

M&Eハイライト Editor’s Choice

M&E vol. 29 No. 1 とNo. 2 に掲載された32報から,M&E 編集長およびSenior Editor が特にお薦めする5報をご紹介します。著者によるハイライト紹介と併せて,M&E 本誌もぜひご覧下さい。

 

扉を拓く - 活躍する若手

・微生物生態学  〜基礎から応用への挑戦 〜                                                            木村 浩之

静岡のフィールドを対象として、地下圏微生物を利用したエネルギー生産システム構築をはじめとする幅広い研究に取り組んでいる、静岡大学の木村浩之准教授。研究機関でのポスドクや大学のポジションを得られるまで、また留学などの様々なご経験をお伺いしました。

・見えなかったものを見る、武器(ツール)を備えて挑む未知の海底下生命圏   諸野祐樹

超高空間分解能二次イオン質量分析(NanoSIMS)を始めとする最先端の実験手法を駆使して、海底資源の生成や海底下の微生物の謎に迫る、ロマンあふれる研究を推進しているJAMSTECの諸野祐樹主任研究員。壮大な研究を支える高いモチベーションや、今後の展望を語っていただきました。

 

世代を超えるメッセージ

第四回: 未熟だから魅力なんです   内山裕夫 先生

第五回: 情報と研究   森崎久雄 先生

 

スポットライト:イケメン&イケジョ

vol.9  岡部聡

vol.10 森裕美

vol.11 新里尚也

vol.12  片山葉子

 

会務報告、お知らせ 他

微生態和文誌29巻1号

環境微生物系学会合同大会2014開催案内

巻頭言   「時代を生きる」           南澤究 会長

大会への招待状 「研究の山脈を作る」     金原和秀 大会委員長

総説 「単一細胞レベルでの遺伝子発現の多様性」  谷口雄一
<要約> 単一細胞のレベルでは内在するmRNA数とタンパク質数とがたえず乱雑に変動している。このため、ひとつひとつの細胞は、たとえ同一のゲノムをもっていても、それぞれが個性的な振る舞いを示す。こうした乱雑さは生物の大きな特徴であり、これを利用することで細胞の分化や異質化を誘導したり、環境変化に対する生物種の適応度を高めたりしていると考えられている。我々は、モデル生物である大腸菌について、単一細胞レベルでの遺伝子発現の乱雑さを、プロテオームレベルおよびトランスクリプトームレベルで定量化し、全遺伝子発現に共通する法則を探ることをめざした。その結果、遺伝子発現の乱雑性は完全にランダムではなく、一定の規則性・法則性の下で生み出されていることが明らかとなった。

リサーチ最前線 JSME2013鹿児島大会ポスター賞
「じぇじぇじぇ!驚きいっぱいのホソヘリカメムシ腸内共生系~いつ研究するの?今でしょ!~」  大林翼
「異化的ヒ酸還元細菌Geobacter sp. OR-1のドラフトゲノム解析」    江原彩香
「好塩性古細菌Haloarculaの生き様~激しい温度変化への適応~」     佐藤悠
「シロアリ腸内原生生物核内共生細菌の同定と宿主への遺伝子水平伝播」    藤田一磨
「ラン藻Microcystis aeruginosa感染性ファージの遺伝的な多様化」     中村銀士
Fusarium属糸状菌の脱窒によるダイズ根粒根圏からのN2O発生」     森内真人

鹿児島大会シンポジウム開催報告
「微生物生態系の「しなやかさ」に迫る」    Socio-Microbiology研究部会 二又裕之

M&Eハイライト Editor’s Choice
M&E vol. 28 No. 3 とNo. 4 に掲載された28報から,M&E 編集長およびSenior Editor が特にお薦めする5報をご紹介します。著者によるハイライト紹介と併せて,M&E 本誌もぜひご覧下さい。
・16S rRNA遺伝子情報に基づいたジャガイモ共生系の細菌群集構造解析 Vol. 28, No. 3, p. 295–305
・非病原性Rhizobium vitis ARK-1株によるブドウ根頭がんしゅ病の生物防除とブドウ根への定着性 Vol. 28, No. 3, p. 306–311
・水処理場由来のsublineage IIに属する亜硝酸酸化細菌Nitrospiraの単離 Vol. 28 No. 3 p. 346–353
・慣行水管理下の水田土壌における,細菌およびアーキア群集構造の季節変動 Vol. 28. No. 3 p. 370–380
・日本の土着ダイズ根粒菌の地理的分布に関する数理生態学的解析 Vol. 28, No. 4, p. 470–478

扉を拓く - 活躍する若手
「深海に見られる微生物共生系の謎に迫る」        中川聡
PNAS、ISME Jといったトップジャーナルにコンスタントに論文を掲載されている一方、物腰がやわらかくスマートな印象の北海道大学水産学部の中川聡准教授。深海における微生物と大形生物の共生系の研究成果についてお話しを伺います。
「微生物生態学とバイオインフォマティクス」    岩崎渉
新進の若手研究者として、キヤノン財団の研究助成に採択されるほか新しい研究者コミュニティを立ちあげるなど、幅広く活躍されている東京大学大気海洋研究所の岩崎渉講師。これまで、そしてこれからを語っていただきました。
「研究道中膝栗毛 〜落ち込むこともあるけれど、私は元気です〜」  成廣隆

世代を超えるメッセージ  「地道にそして発想の転換を」  矢木修身

スポットライト:イケメン&イケジョ           
vol.5   中野伸一
vol.6   大滝宏代
vol.7  大塚重人
vol.8  吉田奈央子

国際学会見聞録
ISEB21(中国)参加報告  金本美穂

アウトリーチシーン 「教育研究部会 活動の現場より」     教育研究部会

学術交流と発信の現場から
ランチョンシンポジウム「アクティブな研究生活をサポート!育児・キャリアアップ世代を生き抜く仕事術」開催報告  濱村奈津子、山本智子
5th TKJsymposium 報告  村瀬潤 福島俊一

会務報告
お知らせ
奥付
編集後記