和文誌新着記事

日本微生物生態学会 36巻1号 ハイライト

総説

共生研究のためのモデル系:ホソヘリカメムシと Burkholderia の魅力
竹下 和貴,石神 広太,Jang Seonghan,菊池 義智

多くの昆虫の体内外に存在している共生微生物は,不足する必須栄養素の供給など宿主昆虫の生存に必須の役割を果たしている。中でも絶対共生微生物は,ゲノム情報が気軽に利用できるようになった現在でも培養が困難である。本稿では,ホソヘリカメムシ-バークホルデリア腸内共生系モデルを用いて著者らが明らかにしてきた研究成果の一部を紹介する。

特集

新型コロナウイルス対応社会における研究のあり方を模索するキャリアパス・ダイバーシティ推進委員会および和文誌編集委員会共同企画

(コロナ渦における研究・就職活動や海外留学,ウイルス研究などについてご執筆いただいた7名の方からエディターズチョイス)

COVID-19 大流行時の米国留学   佐藤 由也

2019年10月から1年間マサチューセッツ工科大学 (MIT) にご家族で留学されていた佐藤先生に,COVID-19の蔓延に伴う米国での研究活動・生活の変化などについてご経験やお考えをご紹介いただきました。

コロナと研究と学会と社会   木暮 一啓

COVID-19の蔓延に伴って生じる様々な疑問に対する答えを模索する上で,微生物生態学会で何か研究上の貢献はできないのだろうかというお考えに至った3つの理由について小暮先生にご解説いただきました。

世代を超えて

当会の黎明期における微生物生態学研究への想いと議論    染谷 孝

1960年に開催された微生物の生態に関するシンポジウムを契機に「日本微生物生態研究会」が発足し,1985年に日本微生物生態学会が発足した。初代会長であった古坂澄石(ふるさか ちょうせき)先生を始め,当会の黎明期にご尽力された方々の約50年前のお考えなどについて染谷先生にご紹介いただきました。

特別企画

なんでバズったの?―アスガルドアーキア論文掲載までのサイドストーリー―
井町 寛之(国立研究開発法人海洋研究開発機構・超先鋭研究開発部門),延 優(国立研究開発法人産業技術総合研究所・生物プロセス研究部門)

2019年8月6日にNatureに論文を投稿した直後にbioRxivで公開したことでプレプリント論文がSNSでバズり,プレプリントの状態でScience誌が選ぶ2019 Breakthrough of the year (finalist)に選出されNature誌の表紙を飾ったアスガルドアーキア論文のサイドストーリーについて,井町先生と延先生にQ&A形式でご紹介いただきました。

微生物生態学会35巻1号 ハイライト

リサーチ最前線(第33回山梨大会の優秀ポスター賞受賞者からエディターズチョイス)

ラッソペプチドの生合成機構の解明を目指して          澄田 智美

特徴的な“投げ縄”構造を有するラッソペプチドは,貧栄養環境下において微生物が生産する抗生物質の一種である。本研究では,ラッソペプチドの合成酵素群のうち生合成経路の第1段階で働くLasB1についてX線結晶構造解析を実施した。

共生細菌のゲノム縮小進化を駆動する要因            金城 幸宏

本稿では,共生細菌を対象にゲノムから遺伝子が失われて単純化していくゲノム縮小進化についてご自身の昆虫の細胞内共生細菌のゲノム解析成果とともに解説している。

アンモニア酸化細菌の個性によるしなやかな生存戦略       一色 理乃

本発表では,アンモニア酸化細菌の継代培養が難しい要因として表現型の不均一性に着目し,アンモニア酸化細菌の細胞集団において増殖と環境適応を両立するために表現型を不均一化する柔軟な生存戦略を明らかとした。

扉を拓く – 活躍する若手

国と分野の境を越えて        渡邉 友浩(マックスプランク陸生微生物学研究所)

ピロリ菌,硫黄酸化菌,メタン生成古細菌と幅広い環境微生物のエネルギー代謝の原理や進化の研究に携わっていらっしゃった渡邉博士にドイツ留学のきっかけやフンボルト財団の奨学金の詳細などについてお話を伺いました。

世代を超えて

微生物と酵素を行ったり来たり             片山 葉子(東京文化財研究所)

現在石造文化財表面の微生物と劣化の関係などについてご研究していらっしゃる片山先生に,硫黄酸化細菌研究の歴史やご自身の硫黄化合物代謝に関与する酵素の構造解析研究などについてご紹介いただきました。

微生物生態学会34巻2号 ハイライト

総説

付加体深部帯水層での微生物メタン生成とエネルギー生産システムの社会実装 木村 浩之,松下 慎,芦沼 完太,津布久 卓也

日本において,東日本大震災の原子力発電の停止により約8%まで低下しているエネルギー自給率を2030年までにある程度回復させるために,新たな科学的知見と技術開発が求められている。本稿では,西南日本の太平洋側の地域に広く分布する厚い堆積層の深部帯水層に存在する大量のメタンに着目し,地球科学と微生物生態学を融合させた研究成果からメタン生成メカニズムを解説するとともに,付加体の深部帯水層に由来する地下水,付随ガス,微生物群集を活用したエネルギー生産システムについて紹介する。

世界に羽ばたく

微生物生態系をバイオインフォマティクス解析で理解する~アメリカでの研究生活より~ 石井 俊一(海洋研究開発機構)

電気微生物群集を対象とした研究に携わっていらっしゃる石井博士に,日本で生物プロセス工学と微生物生態学に出会い,アメリカの研究生活でバイオインフォマティクスを習得し,それらを統合する事によって「電気微生物」生態系の理解をどのように進める事が可能であるのかを,異分野融合に焦点を当ててご紹介いただきました。

扉を拓く – 活躍する若手

カリフォルニア工科大学への留学を振り返って 青木 仁孝(和歌山工業高等専門学校)

難培養性の嫌気的メタン酸化アーキア(anaerobic methanotrophic archaea:ANME archaea)の単離に成功された青木博士に,カリフォルニア工科大学へ留学して得た経験や感じられたことをご紹介いただきました。

「海外留学=すごい」から,一歩踏み出す   守 次朗(横浜市立大学)

学士・修士課程を修了後,PhD studentとしてドイツに留学された守博士に,日本人とは似て非なる「勤勉」なドイツ流の研究スタイルや海外でポスドクの職をみつけるノウハウや心構えなどをアドバイスしていただき,読者の大学生,院生,博士が「海外留学=すごい」から一歩踏み出して挑戦できるよう力強いメッセージをいただきました。

世代を超えて

私にとっての研究 今と昔    工藤 俊章(北里大学)

学生時代・理化学研究所での研究員時代を通して“発酵系研究室の伝統”を守り,夕方になるとアルコールを友として活発にコミュニケーションをとっていらした工藤先生に,大腸菌変異株の網羅的取得研究,難培養性の極限環境微生物や共生微生物の研究,昨今のゲノムデータ解析研究まで各時代で最先端の研究についてご紹介いただきました。

微生物生態学会34巻1号 ハイライト

リサーチ最前線(第32回沖縄大会の優秀ポスター賞受賞者からエディターズチョイス)

water-in-oil エマルションがもたらす新規微生物へのアプローチ  斉藤 加奈子

自然環境中の99%以上と見積もられている未培養の微生物を単離培養して産業的・学術的なさらなる発展へと繋げることを目指し,本研究ではwater-in-oil エマルションを利用した微生物のハイスループット培養・分取技術の開発に取り組んでいる。

エンドサイトーシス獲得への道のり     柿澤 侑花子

エンドサイトーシスやファゴサイトーシスは真核生物特有の現象であり,原核生物では報告例がない。そこで,本研究では捕食性バクテリアの運動や捕食能の研究を通して真核生物の起源に関する示唆を得ることを目的としている。

rRNA遺伝子をプラスミドだけで維持するバクテリアのゲノム進化を考える 按田 瑞恵

本発表では,rRNAオペロンを主染色体に持たずにプラスミド上にのみ持つバクテリアとして新たにスピロヘータ門とバクテロイデス門から複数発見されたバクテリアのゲノム情報を基に,rRNAオペロンをプラスミドだけで維持するというゲノム進化が広範な系統群で複数回独立に起こったことを報告した。

扉を拓く – 活躍する若手

地球規模課題プロジェクトに巻き込まれて地球の裏側へ ~あ,それチリです~ 藤吉 奏(京都大学)

自然に恵まれたチリを拠点として日本とチリの産官学が連携して取り組む赤潮対策プロジェクトMACH (Monitoring of Algae in Chile)の研究に携わっていらっしゃる京都大学の藤吉博士にお話を伺いました。

世代を超えて

私を導いてくれた言葉      福田 雅夫(中部大学)

ポリ塩化ビフェニルやトリクロロエチレンなどの環境汚染物質分解酵素系にかかわる研究に従事された福田先生に,ミシガン州立大学などとの共同研究プロジェクトに携わった経緯や貴重なご経験,坂口謹一郎先生や岡崎令治先生とのエピソードを交えてご紹介いただきました。

微生物生態学会 33巻2号 ハイライト

総説

ベシクルから視えてくる細菌間相互作用の姿  豊福 雅典,森永 花菜,安田まり奈,野村 暢彦

単細胞生物である細菌の研究が進むにつれ,多細胞生物とは異なった独自で多様な生存戦略を持っており,考えられていたよりも細菌は“賢い”ことや我々の予想以上にダイナミックな生活環を送っていることが明らかとなっている。動物細胞におけるエクソソームに類似した,細胞外に膜で構成される微小粒子(メンブレンベシクル:MV)を細菌も放出していることが50年以上も前から明らかとなっている。細菌が放出するメンブレンベシクルの機能が次々と解明される一方で,一番根本的なMVの形成機構については理解が進んでいなかった。本稿ではMVの形成機構を含めて,筆者らの最新の成果を紹介する。

ファイトプラズマ:植物の形を変える怠け者細菌  柿澤 茂行

クリスマスシーズンになると多彩なイルミネーションと共に鮮やかな赤い色のポインセチアが街を彩る。しかし市販されているほぼすべてのポインセチア品種には,人為的にファイトプラズマという細菌を感染させてあり,その細菌が引き起こす症状により葉が多く背丈が低くなり,商品価値が高まることを知る人は多くないだろう。ファイトプラズマは,ポインセチアのみならず多くの農作物に感染して甚大な被害を引き起こすにも関わらず,難培養性であるため研究があまり進んでいなかった。本稿では,筆者らの研究を主軸としてファイトプラズマの性質に迫った一連の研究を美しいカラー写真や図表とともに紹介する。

リサーチ最前線

水素酸化好熱細菌からの可逆的TCA回路の発見  布浦 拓郎

TCA回路はシステムとしての高い保存性を有する一方,ミトコンドリアや好気性微生物に分布する典型的な酸化型だけでなく還元型・分岐型などの多様性と柔軟性を有する。還元的TCA回路は比較的還元的な環境に生息するバクテリアの炭酸固定経路だけでなく,海洋等に広く分布する亜硝酸酸化菌でも機能することが知られる等,普遍的な炭素固定系として改めて注目されている。本稿では,水素酸化硫黄還元によるエネルギーの獲得を必須とする嫌気性好熱細菌であるThermosulfidibacter takaiiの還元型TCA回路を取り上げ, citrate synthaseの吸エルゴン反応に対する触媒能を初めて実証するに至った筆者らの研究について紹介する。

扉を拓く – 活躍する若手

オーストリアに来て4 年が経って  天野 千恵(ウィーン大学)

ウィーン大学の微生物海洋学研究室で2014年からポスドクとして働いていらっしゃる天野博士に,現場培養機を用いた深海の原核生物生産測定やMAR-FISHなど学生時代から継続していらっしゃるご自身の研究内容だけでなく,渡欧前後の経験や精神的葛藤などについてもお話を伺いました。

世代を超えて

サイエンスとテクノロジーと地球と    金原 和秀

もともと化学工学を学んでいらっしゃった金原先生が博士前期課程在籍中に微生物研究を志したきっかけから、博士後期課程からのPCB分解微生物の研究、イリノイ大学での厳しいポスドク生活、地球環境の未来への警鐘まで幅広い内容をご執筆いただきました。

微生物生態学会 33巻1号 ハイライト

リサーチ最前線(環境微生物系学会合同大会2017の優秀ポスター賞受賞者からエディターズチョイス)

植生回復が進む三宅島2000 年噴火後の土壌形成過程における微生物学的解析  海老原諒子(茨城大学)

東京の南に位置する火山島である三宅島では,2000年の大噴火で大量の火山灰堆積物が放出され噴火前の生態系は埋没した。土壌形成過程において植物は光合成産物の供給源となり,土壌の有機物蓄積に寄与することから,三宅島の植生回復は火山灰堆積物中の微生物生態系に影響を及ぼすと考えられる。調査地の中で植生回復が著しい地点では,火山灰堆積物上の土壌A層の形成が確認された。植生回復が進行した環境において,土壌形成に関わる微生物生態系の役割を明らかにするため,本研究では調査地点のパイオニア植物根圏および土壌層位の細菌を標的とした遺伝子解析と土壌性状の調査を行っている。

ロドプシンを保有するUltra-small Actinobacteriaの光利用戦略  中島 悠(東京大学)

ロドプシンは,発色団としてレチナール色素が結合することで光駆動型のイオンポンプとして働く。本研究では,既知のレチナール合成遺伝子を持たないActinobacteriaにおいて明暗いずれの培養条件でもロドプシンのポンプ活性が認められたことから,未知のレチナール合成経路が存在する可能性を示した。また,本細菌は条件に応じて細胞内外に存在するいずれのレチナ―ルをも利用し得るものと考えられることを報告している。

ピコグラム環境DNAのトリセツ  平井 美穂(海洋研究開発機構)

ピコグラムレベルの超微量な環境DNAからのメタゲノムライブラリー構築方法に関する論文がM&Eに掲載されている。ここでは,論文中に書ききれないテクニシャン直伝のノウハウをわかりやすく紹介する。

扉を拓く – 活躍する若手

2分の1 研究回想録から今後の糧を  柳川 勝紀(北九州市立大学)

海底熱水域を中心とした乗船調査に基づき,熱水噴出孔周辺に分布する微生物群集の解析や定量化に取り組んでいらした柳川先生に,微生物生態学と地球科学の学際研究に携わってきたこれまでの経緯や研究について振り返っていただききました。

深海の極限環境に棲む微生物に巡り合って  美野さやか(北海道大学大学院水産科学研究院)

博士後期課程在籍時に米国ウッズホール海洋研究所の『アルビン号』に乗船し1カ月の大西洋航海を経験された美野さやか先生に,海洋水圏環境に棲息する微生物の生理生態のご研究を始めたきっかけやこれまでの研究生活についてお話いただきました。

世代を超えて

導かれるがままの研究人生回顧録  森川 正章

生き物好きなご両親のもと自然と触れ合う機会に恵まれた家庭環境で育ち,自然そして生き物の営みに感動する目が養われたとおっしゃる森川先生に,今では広く認知されている油膜排除活性測定法の考案や最高活性の環状リポペプチドアルスロファクチンの発見に至った経緯や研究生活についてご紹介いただきました。

微生物生態学会 32巻2号 ハイライト

総説

超微小微生物の実態と多様性  中井 亮佑,玉木 秀幸

微生物学が「肉眼では見えない微小な生物」を対象とする以上,微生物はどこまで小さくなれるのか,という問いは本質的な問題である。近年,系統的に新しい超微小微生物(ultra-small microorganisms)が自然界には存在し,それらが0.2 μmフィルターをも通過することが明らかとなってきた。またその驚くべき多様性は,生物の進化系統樹へパラダイムシフトをもたらしている。本稿では,超微小微生物の研究小史を概観しつつ,その実態について論じる。

微生物が織りなす複雑ネットワーク  東樹 宏和

次世代シーケンサーの登場以降,世界中の研究者が微生物の多様性と群集構造の解明を進めており,「どんな微生物がどこにいるのか」という微生物叢のデータが蓄積されるほど,その微生物群集内での相互作用を包括的に理解しようという欲求が高まってきている。本稿では,微生物同士の関係性や共生微生物とその宿主との関係性を表すネットワークについて,大量サンプルの並列アンプリコン解析を基礎とした事例を紹介する。

リサーチ最前線

病気を起こさず宿主と共存するウイルス  浦山 俊一

一般にウイルスは動植物の病気を引き起こす“病原体”として認識されているが,環境中には宿主に病気を起こさない“共存型ウイルス”も存在することが明らかとなった。本稿では,著者らの“ウイルス感染の分子マーカー”を用いた新たなウイルス探索手法と共に,共存型ウイルスの方が病原性ウイルスよりも多様かつ普遍的に存在している可能性について紹介する。

Candidatus ‘Accumulibacter phosphatis’ の温度感受性  道中 敦子

先進国で導入されている下水高度処理技術は,微生物の持つ特徴を活用し,有機物だけでなく栄養塩(リンや窒素)を同時に除去している。そのうち生物学的リン除去(Enhanced biological phosphorus removal)は,ポリリン酸蓄積細菌(Polyphosphate-accumulating organisms, PAOs)の代謝機構を利用した下水中からリンを除去する下水処理法である。本稿では,このPAOsにおける温度感受性について紹介する。

扉を拓く – 活躍する若手

嫌気性微生物による発電と汚染物質分解~マサチューセッツ大学での微生物燃料電池研究で得たもの~  井上 謙吾(宮崎大学)

家畜の糞尿から微生物を利用して電気を作り出すというご研究をされている,宮崎大学の井上謙吾先生にお話を伺いました。学位を取られてすぐに米国に留学し,それまでとは一見全くテーマの異なる微生物燃料電池の研究へと邁進された井上先生のこれまでと,これからについてお聞きしました。

オーストリア・ウィーン大学での長期在外研究  新谷 政己(静岡大学)

2016年からウィーン大学で長期在外研究をなさっている静岡大学の新谷政己先生に,「扉を拓く」始まって以来初めてとなる,聞き手=書き手という「自問自答」形式で在外研究のきっかけや研究生活についてお話しいただきました。

微生物生態学会 32巻1号 ハイライト

リサーチ最前線

全体像を把握する生物学  緒方 博之

時代は変わりつつある。生物学の隅々にハイスループット技術が導入され,微生物生態学も変貌している。本稿では大規模配列解析技術に基づく海洋生物学研究の現状と今後の発展について筆者の私見を中心に述べられている。

深海外部共生研究分野の成果と展望  和辻 智郎

光の届かない暗黒の世界である深海熱水域には,細菌(外部共生菌)を体に付着させた無脊椎動物が繁栄している。本稿では,沖縄の深海熱水噴出域に生息し,腹側の体毛に外部共生菌を宿しているゴエモンコシオリエビを対象とした外部共生菌の機能と役割について著者らの研究成果を中心に最新の深海外部共生研究を概説する。

メタトランスクリプトーム解析によって導かれた,還元的窒素変換反応への鉄還元菌の関与  増田 曜子

次世代シーケンサーによる大規模塩基配列解析技術の発展に伴い,近年様々なサンプルのオミクス解析が次々に行われている。メタトランスクリプトーム解析は,従来の分離培養法やPCRベースの手法に伴うバイアスの回避が可能であると著者は考える。著者らの行った水田土壌におけるメタトランスクリプトーム解析によって導かれた新たな知見を本稿では紹介する。

大気中の水素が植物と微生物の共生関係に関与する可能性  菅野  学

植物の体内には,植物1グラムあたり数十から数百種,細胞数にして102–107の細菌が存在する。植物と微生物の相互作用の基盤には可溶性化合物や表面接触がよく知られるが,一方で,ガス分子の共生関係への関与は,微生物の大気窒素固定を除くとあまり調べられていない。本稿では,微生物の大気水素の取り込みが植物共生に寄与するかを検証した試みについてご紹介する。

扉を拓く – 活躍する若手

独方見聞録  竹下 典男(筑波大学)

東京大学で学位取得後,すぐにドイツ留学され,グループリーダーまで勤められた竹下典男博士が,10年間の留学生活を終えて帰ってこられました。今回は,この10年にわたる貴重なご経験をお話し頂きました。

10 年間にわたる3 ヶ国見聞記~アメリカ,ドイツ,日本での研究生活を振り返って~  寺島 美亜(北海道大学低温科学研究所)

学生時代に植物生理学の分野から始まり,モデル緑藻のクラミドモナスを使用した研究を経て,現在は雪原環境に観察される赤雪の微生物の研究に携わっていらっしゃる北海道大学の寺島美亜先生に,10年間3か国に渡る海外と国内での研究生活についてお話を伺いました。

微生物生態学会 31巻2号 ハイライト

総説

抗菌薬剤感受性試験結果に基づく銅イオン溶液の抗菌・殺菌作用過程  石田 恒雄

金属イオンと金属錯体は,生体系物質のアミノ酸,タンパク質,酵素などとの生体分子との相互作用,環境中に排出する病原性微生物の生態と制御,医薬への応用や病原菌や疫病との関係についての関心が近年急速に高まってきている。銅イオンは,抗菌,防汚剤や殺菌剤などに広く利用されているが,銅イオンと銅錯体は抗菌・抗ウイルスに対してより高い有効薬剤として発現されることが予想される。本稿では,グラム陰性菌あるいはグラム陽性菌に対する表層構造である細胞壁,細胞質膜,細胞質の各過程における銅(II)イオンの移動,反応,透過に伴う抗菌・殺菌作用を溶菌機序と金属錯体形成論から解析・考察し,明らかにした銅(II)イオンによる抗菌作用機構について紹介する。

氷河・積雪上の微生物の生態  瀬川 高弘,竹内 望

グリーンランドをはじめとする北極圏を中心に,雪氷上に繁殖する「雪氷微生物」に各国研究者の関心が近年高まっている。その理由は,地球温暖化に伴い北極の雪氷環境が急激に変化していること,予想を上回る近年の雪氷の融解量にこの雪氷微生物が関与していると考えられることである。さらに,氷河や氷床の後退や雪氷微生物の存在は,北極に限ったことではなく,全世界の雪氷圏に共通している。今まで生物学的にほとんど注目されることがなかった雪氷圏が,一つのバイオームとして認知されるようになった。雪氷上で繁殖する好冷性または耐冷性の雪氷微生物は,氷河の表面に現れる雪氷藻類とよばれる光合成微生物,そしてその生産物に依存した従属栄養性細菌などで構成される。本稿では,雪氷微生物とはどのような微生物なのか,最近報告されている論文を中心に紹介する。

リサーチ最前線

排水処理生物反応槽におけるN2O を還元可能な細菌群の利用可能性  寺田 昭彦,末永 俊和

亜酸化窒素(N2O)は二酸化炭素の約300倍の温室効果を示すことに加え,フロンに替わるオゾン層の破壊に寄与する21世紀最大の原因物質として知られている。N2O削減に寄与する脱窒細菌や,N2O還元以外の脱窒酵素を保有しない偏性的なN2O還元細菌の生理・生態は,排水処理施設をサイトとした研究はあまり進んでいないが,排水処理施設からのN2O放出量削減の必要性が論じられてきている。本本稿では,このN2O削減の解決策になりうる,N2O還元細菌の重要性とN2O 還元細菌の活性を維持可能な環境を模擬するバイオフィルムリアクターについて紹介する。

扉を拓く – 活躍する若手

新たな分離培養技術が照らす未来~硝化菌の獲得から学んだこと~  藤谷拓嗣(早稲田大学)

2015年のコマモックスの発見は大きな注目を集めています。今回は,未培養の硝化菌の分離培養に挑戦し続けておられる,早稲田大学の藤谷先生にお話を伺いました。

放射光を使った微生物研究―これまでの研究を振り返って―  光延 聖(愛媛大学)

放射光源X線顕微鏡をメインツールとして,海底下の岩石圏と陸上の土壌圏での微生物-鉱物-元素相互作用について研究している愛媛大学の光延聖先生にお話を伺いました。

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