2017年度日本微生物生態学会奨励賞・受賞の言葉(池永 誠氏)
分子生態学的手法を用いた植物共存微生物の群集構造解析法の確立
池永 誠
この度は名誉ある第3回日本微生物生態学会奨励賞の受賞者に選定頂き誠にありがとうございました。他にも数多くいる候補者の中から、受賞者にお選び頂きました事につきましては、非常に僭越ながらもありがたく受賞させて頂くと共に、鎌形洋一会長、南澤究選考委員長を初めとした選考委員、そして評議員の皆様に厚く御礼申し上げます。
この度受賞致しました一連の研究は、現在の鹿児島大学に赴任してから開始したものです。事の始まりは、学生時代に恩師木村眞人先生の指導のもと、分子生態学的手法を用いて水稲根に生息する微生物の群集構造を解析していた時で、水稲根試料からDNAを抽出してPCR増幅を行いますと、細菌の群集構造解析では植物オルガネラ(ミトコンドリアとプラスチド)の遺伝子が、真核生物では宿主植物の遺伝子が過剰に増幅され、群集構造解析が極めて困難になるというものでした。当時は可能な範囲内で試行錯誤を繰り返しましたが解決に至らず、その後、当該問題の解決を目指す研究が幾つか報告されるようになり、その内の一つが現鹿児島大学教授境雅夫先生の研究でした。巡り合わせは面白いもので、「問題解決に再チャレンジせよ!」とばかりに、私は鹿児島大学に赴任し、境先生と共に当該問題を本格的に解決する研究に着手しました。
問題の解決法は、論文等をご参考頂ければと思いますので、ここでは割愛致しますが、キーワードは人工核酸であるLocked Nucleic Acid(LNA)の応用です。LNAが持つ高い熱安定性とミスマッチにシビアな特徴を活かして、PCRクランプ技術に用いるLNAオリゴヌクレオチドやLNAプライマーを設計し、さらにPCR条件を調整することで、植物共存細菌と植物共存糸状菌の遺伝子を選択的にPCR増幅することに成功しました。境先生には一連の研究において随所で的確なアドバイス頂き、また本奨励賞にご推薦頂き、この場をお借りまして感謝・御礼申し上げます。
本学会において奨励賞とは、「微生物生態学分野において、学術的に優れた一連の研究に基づく論文、著書等を発表し、今後一層の活躍が期待できる正会員に授与する」とあります。これからも奨励賞受賞者の名に恥じぬよう、引き続き努力し、成果を出して行きたいと思っています。現在は一連の研究の更なる発展型を目指しています。近いうちに成果として発表したいと思いますので、どうぞご期待ください。
最後になりましたが、本研究の一部は、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:生研支援センター)の支援によって実施されました。この場をお借りしまして御礼申し上げます。