微生物生態学会 30巻1号 ハイライト
リサーチ最前線
1細胞ゲノム解析によるシロアリ腸内共生系の解明 雪 真弘、大熊盛也
シロアリは木材を餌とすることから害虫として扱われているが、熱帯林においては植物バイオマスの重要な分解者である。シロアリ腸内には、原生生物、古細菌、真正細菌が共生し、植物バイオマスの分解や窒素固定等を行っていることが知られている。さらに、原生生物の細胞内、細胞表面にも細菌が共生しており、多重共生系を構築している。しかし、共生するほとんどの微生物が難培養性であるため、培養を介さない手法による解析が必要であった。これまでに、メタトランスクリプトームやメタゲノム解析などの培養を介さない手法により、微生物群集全体の機能が明らかにされてきた。近年、様々な手法が開発され、細菌1細胞からゲノム解析を行うことが可能となり、環境中の難培養微生物のゲノム解析が世界中で精力的に進められている。本稿では、筆者らが行っているシロアリ腸内細菌の1細胞ゲノム解析の手法を中心に紹介する。
扉を拓く - 活躍する若手
ゲノム研究で世界をリードするJ. Craig Venter Instituteでの研究生活 鈴木志野
海外の研究機関で研究者としてのキャリアを積むということはどのような魅力や苦労がそこに伴うのでしょうか?今回は、アメリカのJ. Craig Venter Institute (JCVI)で活躍中の鈴木志野研究員にアメリカでの研究生活やご自身の研究内容である蛇紋岩水圏の地下生命圏についてお話を伺いました。(聞き手:広島大 青井議輝)
地圏微生物学のおはなし 〜論文投稿の厳しさと優しさ〜 真弓大介
温室効果ガスとして知られる二酸化炭素の削減方法として深部地下に貯留する、CO2 回収・貯留(CCS)技術が注目を集めています。今回は、CCS技術が深部地下油層環境の微生物生態系に与える影響について報告した、産業総合技術研究所の眞弓大介研究員に、地下圏微生物生態系の最新研究とその産業利用の可能性についてお話を伺いました。