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2018年日本微生物生態学会奨励賞・授賞理由(木村 浩之氏)
Posted On 06 9月 2019
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木村氏は、海洋プレート沈み込み帯に広く分布する堆積物層において、地質学・地球化学・微生物学を融合させた研究手法により、深部地下圏微生物の生理生態を学際的に解明してきた。特筆すべき研究成果は、1)深部帯水層に嫌気的温泉水およびメタンガスが蓄積されていること、2)水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成細菌の共生、3)脱窒による窒素ガス発生の発見である。また、原核生物の 16S rRNA 遺伝子の GC 含量から、海底下に生息する微生物群集の生息温度を推定する新たな手法『微生物分子温度計』を開発した点は、独創的であり、測定困難な海底下の温度を知る上で革新的かつインパクトの高い研究成果である。さらに、地下圏微生物の生理生態学研究を基盤に、温泉施設を所有する自治体や企業と連携して温泉付随ガスを有効利用したメタンガス発電施設を創成し、積極的な社会貢献を果たしてきた。今後、さらに新エネルギー生産、温暖化対策、災害時のインフラ確保を可能とする新たなシステム開発にも大いに期待できる。学会活動に関しては、豊橋大会および浜松合同大会実行委員、評議員、本学会和文誌編集幹事、M&E 誌の Associate Editor、論文賞選考委員会委員長を歴任している。また、和文誌に 4 報、M&E 誌に 5 報を発表しており、その中の 2 報は 2009 年度論文賞、2016 年度 M&E 論文賞選考委員会推薦優秀論文に選ばれている。