「微小領域測定法の最先端」開催のお知らせ(BioGeoscience研究部会@環境微生物系合同大会2017)
環境微生物合同大会において、部会を開催します。ご興味ある方は部会員以外のかたも是非ご参加ください。
研究部会開催の目的
微生物生態学は、環境と微生物の両方を研究する分野ですが、どうしても微生物側からのアプローチのみに偏る傾向があり、環境分野からのアプローチが十分とはいえません。特に近年のゲノム解析の発展でますます生物の解析に比重が大きくなっていますが、環境との関わりを知るためには、環境分析は必須です。さらに、微生物は名前のとおり「小さな」生物であり、微小領域での微生物細胞の観察・測定や周辺化学分析は日々進展している分野で、学会員のみなさまも興味をお持ちのことと思います。
そこで今回は、最先端の微小領域測定の開発やそれを用いた研究に従事されている、諸野さん(海洋研究開発機構)、菅さん(広島大学)に、それぞれご専門の測定手法について
・微小領域の化学分析の方法や原理の紹介
・方法の利点と欠点(なにができてなにができないのか?)
・使い方(申し込み方法)やサンプル調整の注意事項
・ご研究の内容(微生態分野への応用例)
をご紹介いただき、
微生態分野の研究者にとって高いハードルにみえる先端的な化学分析の実際のハードルの高さや使い道の感覚を知ってもらうことを目的としています。
講演者と題目:
・諸野 祐樹(海洋研究開発機構):Biogeoscienceを紐解く微小分析ツールとその実用:”分けて”分析することの重要性とその実際
・菅大暉(広島大学):走査型透過X線顕微鏡 (STXM: 官能基顕微鏡) による微生物試料分析
場所:東北大学川内キャンパス A306号室 BioGeoscience部会集会 (大会パンフレットには記載されておりませんのでご注意ください)
日時:8月29日(火)17:00-19:00(予定)
講演要旨
菅大暉(広島大学)
演題: 走査型透過X線顕微鏡 (STXM: 官能基顕微鏡) による微生物試料分析
概要: 走査型透過X線顕微鏡 (Scanning Transmission X-ray Microscope: STXM) とは、軟X線領域 (~2000 eV程度) のX線を集光素子 Fresnel Zone Plate (FZP) によって数十 nmに集光し,そのX線プローブに対して試料を走査する事で(i) 局所領域での元素イメージングおよび,(ii) 目的部分のX線吸収スペクトル (X-ray Absorption Fine Spectrum: XAFS) を取得する事ができる放射光X線顕微鏡である。その高い空間分解能に加えて,他のプローブを用いる顕微鏡分析 (TEM/NanoSIMS/CLSM-FISHなど) から得られる結果との相補性から,近年では材料物質科学・環境地球科学・宇宙科学などの幅広い分野において,マイクロからナノスケールでの試料観察手法として用いられている。本講演では,まずX線やX線吸収スペクトル (X-ray Absorption Fine Structure: XAFS) の原理およびSTXMの基本原理や装置概要を述べる。続いて,微生物試料の実測定結果を示し,その試料作製法・測定手順・得られた結果の解釈および,TEM・NanoSIMS・CLSM-FISH分析結果と合わせた議論などを紹介する。ここでは「STXM分析で何ができて,何ができないのか?」に関する理解が得られる。これに加えて,通常はあまり紹介されないSTXMマシンタイム申請方法にも触れ,実験開始までにおこなうべき事項等の説明も行う。