4.食べ物と微生物

微生物によって作られるおいしい食べ物、実はとてもたくさんあるんです。

食べ物は、微生物によっておいしくもまずくもなります。まずくなる方は腐敗(ふはい)、つまり腐っているということで微生物のせいで食べられなくなってしまうことです。おいしくなる方は発酵(はっこう)といって、微生物の働きで食べ物の栄養分を保存したり、栄養価を増したりしています。微生物が食べ物のおいしさを引き出してくれているのです。それから、食べ物をおいしくする微生物は、腐敗を起こす微生物から食べ物を守り、食べ物を保存する働きもしてくれています。昔の人たちは、このことを経験的に知っていて、微生物の力を借りて食べ物を保存し、より美味しく食べる方法を見つけていきました。

<微生物の作る食品>

微生物の働きで美味しくなった食べ物(発酵食品)としては、パン、ヨーグルト、チーズ、発酵バター、お酒・ビール・ワインなどのアルコール、味噌・しょうゆ・みりん・酢などの調味料、お漬物(キムチも)、とうふよう(写真①②)、テンペ、納豆(写真③)、鰹節(写真④)、くさや、塩辛、鮒寿司、アンチョビ、発酵茶(紅茶、碁石茶、ウーロン茶(半発酵茶))など、世界中にいろいろなものがあります。
一種類の微生物の働きによってできる食べ物としては、パンや、ビール、納豆などがありますが、味噌やしょうゆ、日本酒のようにカビ、酵母、細菌の共同作業でできあがるものもあります。日本酒では原料のお米が持っているでんぷんをコウジカビ(写真⑤~⑦)が分解して糖分にします。これを使って、酵母(写真⑧)がアルコールに変えています。また、乳酸菌が乳酸を作って酵母の生育を助けます。ヨーグルトは乳酸菌(写真⑨)や酵母が働いて牛乳から作られます。チーズも乳酸菌が働きますが、ブルーチーズ(写真⑩~⑫)やカマンベールチーズ(写真⑬a)は、カビによって風味や食感の違うチーズになっています。昔はチーズを固める酵素(レンネット)を牛から取っていましたが、現在ではその
酵素はケカビというカビから作っています。それから、パンが膨らむのは酵母と小麦に含まれるタンパク質の働きです。

あ、最後に、目で見える大きさだからそうは思えないかもしれないけれど、キノコ(写真⑭)も微生物!食品としてそのまんま食べていますね。

 

【西島 美由紀(にしじま みゆき): ㈱テクノスルガ・ラボ NCIMBグループ】

※この記事は、絵本『いいことおしえてあげる ~びせいぶつのひみつ~』(リバネス出版)に掲載の解説記事を、一部改変して転載しています。文章・画像の無断使用はご遠慮ください。