高校生研究発表セッション (会場:市民ギャラリー2)

日本微生物生態学会が目指す「知識普及と教育貢献」でのアウトリーチ活動の一環として学術発表(一般ポスター発表)と同じ会場でポスターによる成果発表をしていただきます。

ポスター発表では、決められた説明時間(コアタイム)に発表者がポスターの前に立ち、参加者からの質問を受けて頂きます。ポスター番号の奇数と偶数で時間帯が分かれています。 また、学会員によりポスター発表の審査をします。研究課題の目的、方法、結果と結論を判りやすく説明できているかを指標にして審査をし、最優秀賞1件、優秀賞2件を選出します。


[コアタイム:奇数番号 13:10〜14:00、偶数番号 14:00〜14:50 審査結果発表と表彰:15:50〜16:00]
審査結果 演題番号 発表タイトル 校名
優秀賞 H-01 ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)の走光性 神奈川県立
横須賀高等学校
  H-02 イカから採取した発光バクテリアの培養
横須賀学院高等学校
 
  H-03 イシクラゲを喰らう 神奈川県立
平塚農業高等学校
  H-04 ミドリムシの利用に関する研究 神奈川県立
平塚農業高等学校
  H-05 廃材を用いたキノコ作り 神奈川県立
平塚農業高等学校
  H-06 除菌スプレーと合成洗剤の食中毒菌におよぼす除菌効果 山村学園
山村国際高等学校
H-07 ミントタブレットの口腔細菌におよぼす抗菌効果 山村学園
山村国際高等学校
  H-08 香辛料の食中毒原因菌におよぼす抗菌効果 山村学園
山村国際高等学校
優秀賞 H-09 風評被害から地元の牛乳を守る 福島県福島市
渡利中学校
  H-10 身近に眠るバイオマス 横浜市立
横浜サイエンスフロンテイア高校
  H-11 そら飛べ!?センチュウ 神奈川県立
西湘高等学校
  H-12 二価鉄イオン(Fe2+)を用いて合成する光触媒がもたらす作用と効果 神奈川県立
海洋科学高等学校
  H-13 クマムシの熱耐性について 神奈川県立
弥栄高等学校
  H-14 カイコの常在菌の特徴 横浜市立
横浜サイエンスフロンテイア高校
最優秀賞 H-15 麹菌はどのようにして他個体を認識しているのか 横浜市立
横浜サイエンスフロンテイア高校
  H-16 冬虫夏草 神奈川県立
神奈川総合産業高等学校
  H-17 センチュウ(C.エレガンス)による漢方薬の機能評価 神奈川県立
神奈川総合産業高等学校
  H-18 身の回りのアオカビを用いたペニシリンの抽出 神奈川県立
神奈川総合産業高等学校
  H-19 ハイドロゲル・二価イオンを利用したカプセルの実用化の研究 神奈川県立
平塚農業高等学校初声分校
  H-20 粘菌の発生に関する観察と胞子からの再生 神奈川県立
鶴見高等学校

 
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優秀賞 H-01
「ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)の走光性」

校名: 神奈川県立横須賀高等学校
発表者:中谷 樹莉奈、松原 優希奈、鈴木 ひかり、関鵬洋

要 旨:
 ミドリゾウリムシ (Paramecium bursaria) は,その細胞内にクロレラが共生しており,走光性を示す.本研究では発光ダイオード(LED)により,培養液中のミドリゾウリムシに光を照射し,その走光性の波長と強度による変化を考察する.また,ワンボードコンピュータであるRaspberryPiの汎用入出力(GPIO)をプログラム言語pythonにより制御してLEDを一定の周期で明滅させ,その明滅パターンがミドリゾウリムシの走光性に与える影響を考察する.
 ミドリゾウリムシを暗所で培養して共生クロレラの個数を減少させた白化ミドリゾウリムシについても同様の実験を行い,共生クロレラがミドリゾウリムシの走行性に与える影響を考察する.
 これらの実験において走光性の記録には自作の簡易顕微鏡による拡大撮影データを使用する.撮影したデータを元にミドリゾウリムシの培養液中における軌跡のデータ処理を行う.


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H-02
「イカから採取した発光バクテリアの培養」

校名: 横須賀学院高等学校
発表者:○金子 大輔、花房 若奈、相川 宏輝、清水 耕太郎、
橋本 明人、渡邉 俊樹、江波戸 達也、内構 里菜、
高野 優香、坂上 欧介、森住 太一

要 旨:
 私達は昨年から「イカの体表に生息している発光細菌の培養」について研究を進めてきた。
 昨年度は入手した資料に基づき実施したにも関わらず、増殖、単離には至らなかったため、今年度は次のように作業工程を見直し、増殖を目指した。
スーパー等で新鮮な活イカを購入し、外套膜を適当な大きさに切る。
切ったイカをシャーレに入れ、イカにかからないよう注意しながら3%食塩水を注ぐ。
シャーレにふたをして、さらにジップロックに入れたものを17℃に設定したインキュベータに入れ、24〜48時間静置したのち、暗箱に入れ、発光を確認。
しかし、この方法では発光を確認できなかったため、別の文献の著者である慶應大学の秋山豊子氏に照会し、助言に従って、デジタルカメラを用いて長時間露光で撮影したところ、幾つかの試料から発光を確認でき、24時間培養したものより48時間培養したものの方が発光面積も広く、より明るかった。次に、発光している部分をマリンブロス寒天培地に移し、24〜48時間培養させ、発光微生物の単離を試みた。しかし、切り身を直接培養したときよりも発光が弱く、日に追うごとに減衰していった。そのため、培地にイカ抽出液を加えるなど培養条件についての試行錯誤を重ねている。 今後はイカ体表の微細観察に加え、発光が微生物本体によるものか、微生物由来の発光物質によるものかを検討し、どのような条件で一番長く、明るく発光するのかに焦点を当てて研究を進めていきたい。
また、この実験では、イカの外套膜の切り身と同時に作製したイカの眼球およびその周囲の筋肉組織を用いたシャーレのほうが明るく発光していることに気づいた。その理由として、流通の過程で魚体が流水で洗われる際に、イカの体表よりも構造が複雑な眼球周辺に発光細菌が多く残されているのではないかという仮説と、イカの眼球周辺には、発光細菌の発光を促進する液体が分泌されているのではという仮説を立てている。


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H-03
「イシクラゲを喰らう」

校名: 神奈川県立平塚農業高等学校
発表者:○桐畑 誠、阿部 望夢

要 旨:
目的
 イシクラゲは、古来沖縄地方で食用に供していたラン藻類の一種で、現在ではシアノバクテリアと呼ばれている。しかし、最近では道路・庭・または駐車場に生えていてむしろ邪魔な存在になっている。どのようにしたら食用に供することができるのかを検討した。また、イシクラゲの中に入っているカロテノイド色素について分析をして、総合的にイシクラゲについて知ることを目的に行った。

方法
 材料のイシクラゲは、平塚市内の駐車場などから採取したものをそのままビニール袋に入れて学校に持ち帰った。綺麗に洗って(ごみや小石を取り除く)沸騰した水に5分間加えて煮沸消毒した後、ざるにとってから水道水にさらし、粗熱を取って再度ざるにあけて試食に供した。
そのまま利用した組み合わせは、ポン酢・三杯酢・みそ汁・そばつゆ ・中華スープ・ドレッシング・食べるラー油・お茶づけなどである。 少し手を加えて加工したものに、ふりかけ・板のり・佃煮。料理に加えて みた例は、かき揚げ・チジミ・卵焼きです。
色素の分析には、イシクラゲをヘキサン:アセトン(7:3)混液にて抽出してからシリカゲルTLCによる分離後、画分を以下の実験に用いた。分光光度計での吸収波長・HPLC(シムパックCLC-ODSカラム アセトニトリル)

結果
 イシクラゲの食感を生かせる料理もあるが、相当工夫しなければ 食べらせそうにないものもあった。
イシクラゲの黄色みがかった赤色の色素はエキネノンであることがわかった。エキネノンはビタミンAの効果を持つ。一般的な食材としては、ウニの中の色素として有名である。
さらに、研究班の活動としてアルカリ性の土壌にシアノバクテリアを繁殖させて野菜等を栽培するピロール農法の検証実験も開始した。


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H-04
「ミドリムシの利用に関する研究」

校名: 神奈川県立平塚農業高等学校
発表者:○飯田 龍揮、村上 睦、山口 未矩、
湯川 真尋、西村 月夕海、中野 裕理

要 旨:
目的
 以前卒業した先輩方が行っていたミドリムシの培養方法の検討と培養したミドリムシを使った食品開発でクッキーやロールケーキ、マシュマロ等を作りました。このことをふまえ今回はクッキーなどのお菓子という点ではなく普段の生活に取り入れやすい主食というところに注目し、ミドリムシを日常的に摂取できるようにすることを目的に製造実習を行った。

方法
 培養したミドリムシは国立環境研究所から分譲していただいた NIES―48をHUT培地に植えつぎ、窓辺に約20日間おいて緑色になったものを遠心分離(6000rpm×5分間)した沈殿物を試料とした。実験区は、ミドリムシの入っていないパン、市販のミドリムシ粉末を入れたパン、自分たちで培養したミドリムシ入りパンの3種類を製造して、比較検討した。

結果
 製造したパンは、第一に、ミドリムシを混ぜるタイミングの検討として当初より生地に練りこむ方法が発酵後に混ぜるより適していることがわかった。第二に、生地を焼く温度は指定されている220℃ではなく、180℃の方が適していることがわかった。
さらに本来のパンには含まれていない、ミドリムシの成分が我々の健康促進効果が期待される。
また、本校の記念庭園中の池の中にもミドリムシが生育していることが判明したり、同じ研究班のイシクラゲ観察中に偶然にもミドリムシを発見した。土壌中に存在していることがわかったのでその生育調査も今後続けていければと感じている。


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H-05
「廃材を用いたキノコ作り」

校名: 神奈川県立平塚農業高等学校
発表者:○川上 和真、松山 大晟、内海 碩人、小石原 祐介

要 旨:
目的
 サンゴ樹という学校で使用されていた防風林が廃材として捨てられそうになるのを見かねた先輩が「この木がこのまま捨てられるのはもったいない、この木でキノコを作れないか」という気持ちから、きくらげ作りに挑戦した。次の年、新しいテーマとして「サンゴ樹ではない、身近な廃材を利用してキノコを作れないか」という事で、とても身近であり、多く捨てられる段ボールを使ったヒラタケ作りを行った。
そして今年、課題になっていたダンボールの役割の解明と「身近にある廃材を、種類を増やして作る」ということで、段ボールだけではなく職員室で出たシュレッダー紙を利用したヒラタケつくりに挑戦し、多くの人に廃材でも十分にキノコ作りができることを知ってもらうことを目的にした。

方法
 培地は、米ぬか+廃材+水だけの簡単なものです。専用のPP袋に詰めて、121℃2気圧70分間オートクレーブして滅菌した。放冷後 クリーンベンチ内で袋を切り、種菌を植えて、上部を加熱シールし室温にて培養した。もう一つの課題であったダンボールの役割として、菌を植えた培地(いわゆる菌床培地)中のグルコース濃度の測定をHPLC(シムパックCLC-NH2 水 示差屈折計)を用いて行った。

結果
 結果は予想通り廃材の種類に関係なく、ヒラタケを収穫することができた。ヒラタケの収穫量に、段ボールとシュレッダー紙では有意な差は見られなかった。収穫したヒラタケは、研究班の生徒で、バター醤油炒めでおいしくいただきました。
菌床培地中のグルコースはほとんどが、米ぬか由来のものであることが判明した。また、シュレッダー紙はほとんどグルコースを産生することがなかったが、段ボールは、グルコース産生力が強かった。これにより段ボールは菌の生育環境と栄養素の両方の意義が示唆された。高価なオガコの代わりとして、安価な段ボールやシュレッダー紙を用いることによってキノコを生産することが可能になった。これは大きな成果である。


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H-06
「除菌スプレーと合成洗剤の食中毒菌におよぼす除菌効果」

校名: 山村学園山村国際高等学校
発表者:中島 彩香、北堀 隼人

要 旨:
【背景】生物部の研究テーマは微生物(真正細菌)を対象としている。ここ数年は抗菌力をもつ天然食材の抗菌効果の研究を行っている。これらの研究により、天然食材に含まれる抗菌成分や、その成分量と抗菌効果の関係を検証することができた。昨年の研究は、テレビのコマーシャルで良く目にする除菌スプレーや台所用合成洗剤には「99.9%」の除菌とあるが、これは本当なのか!?この疑問から納豆菌を試験菌株として検証を行ったが、納豆菌なので説得力を欠いた。そこで今回、食中毒菌(大腸菌)を試験菌株としてブラッシュアップを図り、「99.9%」の高い除菌効果は存在しないと考え(仮説)検証を開始した。

【材料および方法】研究には予備実験(抗菌力試験)の結果から、除菌スプレーには「ファブリーズ」、台所用合成洗剤には「ジョイ」を選んだ。除菌スプレーの除菌効果は、生菌(グラム陽性菌の大腸菌)を付着させた布巾に「ファブリーズ」を噴霧して、除菌されなかった生菌を希釈法にて生菌総数(CFU/g)として比較した。また「ファブリーズ」以外に、太陽光と殺菌灯を照射した布巾も、同様に希釈法にて生菌総数を比較した。一方、台所用合成洗剤の除菌効果は、生菌を付着させた布巾に「ジョイ」を十分浸透させ、一晩浸け置いた後、これも希釈法にて生菌総数として比較した。さらに台所用合成洗剤の「ジョイ」に、抗菌効果の高いレモングラス(天然精油)を5.0%・10.0%・20.0%添加して、この除菌力の強化を試みた。

【結果および考察】「ファブリーズ」の生菌(大腸菌)におよぼす除菌効果は低く(49.5%)、「99.9%」の除菌効果は無かった。一方、太陽光(98.4%)や殺菌灯(100.0%)では高い除菌効果が発揮され、除菌スプレーの化学物質による除菌効果より有効性が検証できた。また「ジョイ」の場合は、一晩浸け置くことにより布巾の生菌(大腸菌)は大幅に減少(94.7%)したが、これも「99.9%」の除菌効果は無かった。しかし「ジョイ」に、レモングラスを添加していくと、20.0%で除菌効果が強化(約3.1倍)された。これはレモングラスの抗菌成分であるシトラールによるものと考察した。このレモングラスの添加は、台所用の強力除菌合成洗剤(特製ジョイ)の使用法として提案したい。


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H-07
「ミントタブレットの口腔細菌におよぼす抗菌効果」

校名: 山村学園山村国際高等学校
発表者:小林 湧弥

要 旨:
【背景】生物部の研究テーマは微生物(真正細菌)を使用した抗菌力をもつ天然食材の抗菌効果である。昨年は納豆菌をマーカーとして、『ミントタブレットの抗菌効果』を研究し、ペパーミントによるメントールの抗菌効果を発表した。今回はマーカーを納豆菌から口腔細菌(以下、口腔菌)に替え、ミント錠菓である「ミントタブレット」にも口腔菌におよぼす抗菌効果があると考え(仮説)、その原因を検証した。

【材料および方法】ミント錠菓である「ミントタブレット」には多くの種類があるが、今回は「ミンティア(アサヒフード&ヘルスケア)」を検体として選んだ。 内訳は「コールドスマッシュ」・「ドライハード」・「ワイルド&クール」・「グレープ」・「ピーチレモンソルベ」・「アクアスパーク」・「カルピス×ミンティア」・「黄金桃」・「グレフルアロマミント」・「カテキンミント」・「グリーンエバー」の11種類である。抗菌効果の測定には、口腔菌を標準寒天培地(以下、培地)に全面塗布し、ここに「ミンティア」を等間隔に配置した。培養はインキュベータで36℃・18時間、好気条件下で実施した。培養後、口腔菌の増殖を阻害した阻止円範囲から抗菌効果を算出した。

【結果および考察】生物部員の官能試験(「ミンティア」を口に含む)の結果から、「ミンティア」には辛味と酸味と甘味の3タイプがあり、口腔菌におよぼす抗菌効果は、酸味>甘味≠辛味の順となった。そこで酸味の検証のため、各「ミンティア」のpHを測定すると、酸味タイプは他の2タイプと比較して酸性度(㏗=2.86〜2.96)がとても低く、これは酸味「ミンティア」であった。さらに、この酸味「ミンティア」を調べてみると、原材料として酸味料の記載があり、昨年の納豆菌による研究では、抗菌効果は辛味のペパーミントによる「メントール」の作用であると報告したが、口腔菌では酸味料による酸性度(㏗)と考察した。その根拠としては㏗を調節した培地の検証において、口腔菌は㏗=4.5では盛んに増殖するが、㏗=4.0では全く増殖が見られない。すなわち酸味「ミンティア」は、酸味料により㏗≦2.96と酸性度が低いために、これが培地に浸透拡散して㏗≦4.0の濃度勾配を作り、口腔菌の細胞膜(脂質二重層)を透過して高い抗菌効果を発揮したと考察した。


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H-08
「香辛料の食中毒原因菌におよぼす抗菌効果」

校名: 山村学園山村国際高等学校
発表者:上坂 朋之

要 旨:
【背景】研究テーマは微生物(真正細菌)を使用した抗菌力をもつ天然食材の抗菌効果である。前回は納豆菌をマーカーとして、『加工香辛料の抗菌効果』を発表した。今回はマーカーを食中毒原因菌(以下、食中毒菌)に替え、さらに香辛料も加工品(チューブ入)と天然品(生食材)に種類を増やして、これらの香辛料が食中毒菌に抗菌効果があると考え(仮説)、その原因を検証した。

【材料および方法】香辛料は、加工品はエスビー食品の「本わさび・本からし・生にんにく・生しょうが」を選び、天然品は静岡産「山葵」・青森産「大蒜」・高知産「根生姜」を選んだ。マーカーはグラム陽性菌の「黄色ブドウ球菌・セレウス菌」と、グラム陰性菌の「大腸菌・腸炎ビブリオ」を選んだ。また天然品「山葵」に加工品「本わさび」を混ぜ、「山葵」の風味を活かした刺身の「腸炎ビブリオ」に抗菌効果の高いワサビの香辛料も研究した。抗菌効果の測定には、改良したペーパーディスク(以下、PD)拡散法に従い、希釈法で濃度調節(107CFU/mL)した食中毒菌を万能寒天培地(以下、培地)に全面塗布し、中央に香辛料を浸み込ませたPDを配置した。培養は36℃・18時間、好気条件で行った。培養後、食中毒菌の増殖を阻害した阻止円範囲を基準として、抗菌効果を表した。

【結果および考察】「本わさび・本からし」は、全ての食中毒菌に高い抗菌効果をおよぼした。特に「腸炎ビブリオ」の阻止円範囲は最大であった。また「山葵」では「腸炎ビブリオ・セレウス菌」で抗菌効果が認められた。これらは揮発性のアリルイソチオシアネートとよばれる辛味の抗菌成分により抗菌効果を発揮している。一方「生にんにく」は、「セレウス菌」に若干の抗菌効果があったが、「大蒜」では、全ての食中毒菌に抗菌効果をおよぼした。これらも揮発性のアリシンとよばれる臭気の抗菌成分により抗菌効果を発揮している。最後の「生しょうが」と「根生姜」であるが、全ての食中毒菌で抗菌効果がなかった。これは抗菌成分の香味であるジンゲロンが揮発性の形態をとらないので抗菌効果が現れない。また「山葵」に「本わさび」を混ぜて、天然「山葵」の風味を損なわない、刺身の食中毒原因菌である「腸炎ビブリオ」に高い抗菌効果を発揮するワサビの香辛料であるが、これは「山葵」に「本わさび」を30%添加することにより、食中毒の心配から回避できる「特製ワサビ」を開発した。


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優秀賞 H-09
「風評被害から地元の牛乳を守る」

校名: 福島県福島市渡利中学校
発表者:佐藤 美徳、佐藤 未羽、遠藤 瑞季

要 旨:
 東日本大震災から5年6か月が経過し、インフラの整備など被災地の復興もだいぶ進んでいる。しかし、被災3県の中で福島の復興については、原発事故の影響が大きく、農産物や畜産物などの風評被害は未だに続き、市場価格などでも震災以前のレベルには回復していない。
 本校科学部は、そうした状況の中で「中学生の力でも復興の力になれないか」と考え、4年前から「家庭用植物工場」「塩害を植物を使って克服する」研究に取り組んできた。
 本研究は、昨年から始め、安心・安全の検査を受けながらも風評被害を受ける牛乳消費の手助けになれないか、さらに給食時に残る牛乳を無駄なく活用できる方法がないかと考えた。牛乳の活用方法は、大きく2点から研究を進めた。

1、市販のヨーグルトと手作りのヨーグルトの種菌を使った場合、ヨーグルトを効果的に作れる方法は何か
 ①発酵温度の調整 ②時間的な発酵の様子の変化 ③牛乳と種菌の割合を変えた場合 ④牛乳の種類による発酵の違い ⑤種菌の違いによる発酵の違い ⑥ラクトースを加えた時の発酵の速度の違い
 などの条件を変え、糖度・酸度・糖酸比・pH・形状の変化を比較した。

2、ヨーグルトのカゼインを用いて、生分解性プラスチックを作ることができないか
 カゼインから生分解性プラスチックを取り出すには、加熱した牛乳に酢酸などを加えることで固形物として取り出す方法が知られている。この方法の場合、加熱のエネルギーとタンパク質を凝固させるための酸が必要となる。
 乳酸菌を用いて、ヨーグルトとして発酵させ、ろ過させた後に、残渣としてろ紙上に残ったものを形状を整えることができれば、プラスチックとして利用が可能だと考えた。また、原材料も動物由来成分であるため、分解可能であるうため、生分解性プラスチックとしての利用価値が高まると考えられる。実際に、濃度を変えた酢酸を牛乳に加えた時と、ヨーグルトとして発酵させて作った場合に得られる固形物との比較を行った。


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H-10
「身近に眠るバイオマス」

校名: 横浜市立横浜サイエンスフロンテイア高校
発表者:武富 巧、金指 勇樹、二山 晃大

要 旨:
Former students’ research showed that iron is effective in generating hydrogen and methane gas, and that the more pH increase, the less amount of gas is generated.
Final goal of my research was “utilizing both electric power generation of iron reduction bacteria and gas generation of Methanogenesis archaebacterium could make more energy” our research had two hypotheses. First, there is suitable environment. Second, a substance such as ammonia which is from putrefactive bacteria could be decomposed by photosynthetic bacteria and gas generation could be kept longer.
Soil from the bottom of Tsurumi River and from the school biotope, and weeded wild plants are prepared.
Four experiments were done for first hypothesis. First experiment was conducted to clarify the suitable temperature for Methanogenesis Archaebacterium. Second experiment was to see the effectiveness of each soils on gas generation and decomposing cellulose how effect where mud came on amount of generation gas and breaking up cellulose. Third, experiment is how pH is suited to iron reduction bacteria. Forth, experiment is what kind of microorganism exists while generating gas and electricity. A experiment was done for second experiment. That experiment is to clarify the effect of the bacteria on leaves and in soil and effectiveness of light on amount of gas generation.
The results of five experiments showed that; 38℃ is suited to Methanogenesis Archaebacterium; mud from a drain generate the most amount of gas and decomposed cellulose most quickly; low pH is not suited to iron reduction bacteria; there is a relationship between slender microorganism and generating gas; there is synergy between bacteria which from mud and leaves.
These result are not only supporting our hypotheses but also showing that “Synergy between bacteria which from mud and leaves” and “the condition of cellulose decomposition”. Further research with these results are being worked.
We would like to propose the way of continuous utilization of plant biomass. The way is as follows. First, bacteria in mud generate electricity. Second, bacteria generate gas by breaking up cytoplasm of plants. Third, photosynthetic bacteria keep down bad substance. Forth, glucose is made by breaking cellulose. Finally, bacteria make gas by decomposed into glucose. Shall we take some energy out which is so near you?


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H-11
「そら飛べ!?センチュウ」

校名: 神奈川県立西湘高等学校
発表者:関野 将也

要 旨:
 苔の中には多様な小型土壌動物が生息している。しかし、その生態はあまり研究がなされていない。そこで木の幹に着生する苔に焦点をあて、苔の中の小型土壌動物がどのような生態的特徴をしているのかを研究した。
 まず始めに、今回研究する苔の中にどのような小型土壌動物が生息しているのかを調査するため、地面から苔までの高さが異なる4カ所の場所からそれぞれ日向と日蔭、合計8カ所の場所で苔を採取し、顕微鏡で観察した。
 その結果、生息する小型土壌動物はセンチュウが大半を占め他の小型土壌動物はあまり確認されなかった。この事を踏まえ、センチュウ以外の生物ではデータの収集が困難であると判断し、センチュウに絞って研究を進めることにした。
 次に苔が日向側と日蔭側のどちらにあるかでセンチュウの個体数に変化があるのかを調査した。そのために、地面から苔のある高さを揃えそれぞれ6カ所のコケを採取した。その結果、日向側より日蔭側の方が圧倒的にセンチュウの個体数が多かった。
 次に、どの高さまでセンチュウが生息しているのか、またセンチュウの個体数と高さに関係があるのかを調査した。また、日向側は個体数が少ないため日蔭側でのみ苔を採取した。その結果、採取限界であった2.4mの高さまでセンチュウが生息しており、高さと個体数に関係はなかった。
 ここで一つ疑問が生じた。体長1mmにも満たないセンチュウがどのようにして体長の2400倍の高さまで上ったのか。そこで調べてみると小型土壌動物は風によって飛ばされることがあるのだと判明した。そこで、本当にセンチュウが風によって飛ばされてくるのか調査した。そのため、木の横に木材で土台をつくり、プレパラートにワセリンを塗ったものを置き数週間放置した。その結果、センチュウは発見されなかったが、トビムシとダニが確認された。


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H-12
「二価鉄イオン(Fe2+)を用いて合成する光触媒がもたらす作用と効果」

校名: 神奈川県立海洋科学高等学校
発表者:浅利 優輝、石川 晃、石塚 裕貴、伊藤 健太、
小林 陸人、末永 基弘、鈴木 嘉人、芹澤 侑樹、
田中 文太郎、廣川 昂大、渡部 駿希
共同研究:杉本 幹生 (無有産研究所)

要 旨:
《研究背景・目的》
相模湾および全国各地の沿岸で深刻化している磯焼けの原因に、水域の植物の生育に必要不可欠な二価鉄イオン(Fe2+)の欠乏がある。この二価鉄イオンの作用・効果には、植物の生育とそれによる他の生物の活性化、水域のリンなどと反応・沈殿すれば、富栄養化が減少するといった浄化作用がある。また二酸化炭素と反応、固定化し沈殿すれば温暖化ガスの減少につながるという、水域だけでなく、光合成により大気のバランスもとる。
 さらに、この二価鉄イオンの新たな展開が 研)農研機構よりあった。それは、ポリフェノール類などの鉄還元性有機物と二価鉄イオンの合成により、可視光線下で殺菌・有機物質の分解に効果がある光触媒ができる(特許第5733781号、特開2015-044154)という画期的な発明であった。
 上記より、例えば磯焼けと同じく問題視されているヘドロ水域に二価鉄イオンを供給すれば、生息する底層生物を活性化と鉄イオンの化学的結合により水質が改善され、さらに含有する腐食植物が生成する還元性有機物と光触媒を合成、ヘドロなどの有機物の分解を助け、生成された肥料・養分が水域に拡散すれば磯焼けの解決につながると考えた。そこで、二価鉄イオンを継続的に生成する「鉄イオン溶出体」(特許第5258171号)を開発した杉本幹生さんの協力のもと、光触媒がヘドロを分解する微生物にもたらす効果を調べた。
 次に、二価鉄イオンのさらなる可能性を調べるため、研)農研機構の光触媒による微生物の殺菌効果に着目した。本校のプールで使用する次塩素酸ナトリウムは、体がかゆい、目が痛いなどの症状がでる。鉄イオン溶出体を用いれば、鉄化合物などの鉄供給源は不要となり、安全で低コストの殺菌効果がある光触媒が合成可能ではないかと考えた。よって、鉄イオン溶出体が生成する二価鉄イオンとポリフェノール類などで合成された光触媒による微生物の殺菌効果を調べた。

《方法》
 1.ヘドロ中の微生物の活性を調べる実験では、本校近くの川より採取したヘドロを用いた。河川水を入れた1Lビーカーにヘドロと鉄イオン溶出体を入れ観察した。
 2.殺菌効果を調べる実験では、アスコルビン酸とカテキン粉末、鉄イオン溶出体を用いた。材料や配合比を変えて合成した数種の光触媒液中に大腸菌を入れ、太陽光下で静置後、LB培地に植菌し、大腸菌の増殖の有無を比較した。

《結果》
実験継続中のため、結果は学会にて発表します。


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H-13
「クマムシの熱耐性について」

校名: 神奈川県立弥栄高等学校
発表者:久保田 一輝

要 旨:
背景
クマムシとは、緩歩動物門に属する体長0.1〜0.01mm程の生物の総称で、現在では約1000種類が確認されている。水生、陸生が存在し、特に陸生クマムシはゆっくりと乾燥させると樽状態になり、熱、高圧、放射線、紫外線などへの耐性を持つようになることで知られている。
そこで、クマムシの耐性に興味を持ち、比較的容易に実験できる熱耐性の研究をすることにした。

目的
これまでの研究では、80℃で5分間加熱すると全てのクマムシが生存した。そこで、生存できる限界の時間と温度を調べることにした。

実験方法
クマムシをろ紙の上で48時間乾燥させ樽状態にし、一定の温度に設定した定温機に入れる。一定時間後取り出し、水をかけて生存を確認する。


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H-14
「カイコの常在菌の特徴」

校名: 横浜市立横浜サイエンスフロンテイア高校
発表者:タダ 光邦、笹川 拓望、塗木 翔天、丸山 優樹

要 旨:
 常在菌は健康状態に影響を与えることで近年注目を浴びている。このことに興味を持ち,ヒトの手の皮膚に存在する常在菌を培養して観察しているうちに人以外の生物にはどのような常在菌がいるのか疑問に思った。そこで本研究では部活動で飼育しているカイコに注目した。カイコは薬物の基本的な代謝経路が哺乳類と共通していることから,創薬分野におけるモデル動物としても期待されている。本研究ではカイコのフンから得られる常在菌の特徴を調べることを目的とした。
 飼育温度を25℃として10×16.5×3(cm)の容器内に25個体のカイコを飼育し,そこからカイコのフンを4日おきに採取した。1齢と2齢においてはフンを直接,3齢以降はフンを蒸留水に懸濁したものを,LB寒天培地に植菌した。植菌したシャーレには空気穴をあけ,30℃のインキュベータ内において10日間培養した。エサとしてクワの葉を与えたグループと人工飼料を与えたグループに分け,植菌したシャーレにみられたコロニーを観察した。
得られたコロニーを比較すると,クワの葉を与えたグループの方が,人工飼料を与えたグループよりも種類が多様であった。クワの葉を与えたカイコのフンからは白いコロニーや黒いコロニー,茶色のコロニーが得られた。コロニーの中には菌糸が生えているものもあった。人工飼料を与えたカイコのフンから得られたコロニーは,白や粘り気のある薄い黄色のコロニーであった。グラム染色をしたところ,どちらのグループからもグラム陰性を示すコロニーが多くみられた。
クワの葉を与えたグループに見られた黒いコロニーは,クワの葉の懸濁液を植菌したものからも得られたため,この微生物はクワの葉から取り込まれたと考えられる。また,クワの葉で育てた個体は病気にかからなかったのに対し,人工飼料で育てた個体の多くが病気にかかった。病気にかかった個体の体内に含まれていたものを培養すると,ヒトの手のひらにいる常在菌と似たコロニーが観察されたことから,飼育時にカイコがヒトの常在菌に感染した可能性が示唆される。
クワの葉を与えたカイコと人工飼料を与えたカイコの常在菌には違いがみられたことから,今後はその違いが病気に対する抵抗力にも影響を与えるという仮説をたて,検証していく。


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最優秀賞 H-15
「麹菌はどのようにして他個体を認識しているのか」

校名: 横浜市立横浜サイエンスフロンテイア高校
発表者:宇佐美 悠、角田 望、岸 里名子、佐藤 美瑠斗

要 旨:
 麹菌は味噌や醤油など和食には欠かせない菌であり、日本の国菌にも指定されている。しかし、その生体に関しての基礎的な研究はあまり行われていない。そこで本研究では、麹菌が同一の培地上で他のコロニーの菌糸を避け合う性質をもつことに着目し、どのようにして他のコロニーの菌糸を認識しているのかを解明することを目的とした。
 研究を行うにあたり3つの仮説を立てた。1つ目は、菌糸が触れ合うことにより、認識しているというもの、2つ目は、培地の栄養の減少を感知することにより、認識しているというもの、3つ目は、麹菌がコロニーの周りに化学物質を放出し、それを感知することで、認識しているというものである。これらの仮説をもとに3つの実験を行った。なお、実験を行う際、懸濁液は1000個/μLと10個/μLを使用し、培地はPD培地、培養温度は30℃とした。
 1つ目の実験は、麹菌が互いを認識し始める距離を調べる目的で行った。まず、基礎実験として1つの培地に麹菌を1箇所スポット植菌して培養し、毎日成長量を測定した。次に、1つの培地に35 mm離して麹菌を2箇所スポット植菌して培養し、毎日成長量を測定した。その結果、2箇所スポット植菌したとき、菌糸は触れ合うことなく、避け合いながら成長をつづけた。今後は、菌糸を避け合い始める距離を計測していく必要がある。
 2つ目の実験は、麹菌が互いを認識する際に培地が関与しているかを調べる目的で行った。まず、寒天培地の中央を縦に幅5 mmメスで切り取り、培地を左右2箇所に分けた。次に、培地上に左右1箇所ずつ麹菌をスポット植菌して培養し、菌同士が互いに避け合うかどうかを観察した。その結果、菌糸は避け合うことがなく、培地の端まで成長をつづけた。
 3つ目の実験は、麹菌が互いを認識する際に化学物質が関与しているかを調べる目的で行った。まず、麹菌を蒸留水とジエチルエーテルでそれぞれ懸濁する。次に、濾過滅菌を行い、その溶液を麹菌のそばに垂らし、麹菌が溶液を避けるかを観察した。その結果、ジエチルエーテルにとかした脂溶性成分を避ける傾向は見られなかったが、蒸留水にとかした水溶性成分を避ける傾向が見られた。
 これらの結果から、麹菌は培地を介して他の菌糸を認識し、それには水溶性の化学物質が関与していることが示唆された。


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H-16
「冬虫夏草」

校名: 神奈川県立神奈川総合産業高等学校
発表者:保川 望、坂口 龍平

要 旨:
はじめに
 漢方薬について興味を持ち、調べていくうちに冬虫夏草の存在を知った。文献調査の結果、冬虫夏草は人工栽培が難しいこと、生きている宿主と死んでいる宿主に菌を植え付けて子実体を形成させたときでは漢方としての薬効に違いがあると言われていることが分かった。そこで本研究では、冬虫夏草の人工栽培に取り組むことにした。人工栽培成功後は、薬効成分の調査に取り組んできたいと考えている。
今回は人工栽培の取り組み経過について報告する。

実験方法
1、菌株はCordyceps militaris (NBRC 100741) を使用し、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)にて培養した。
2、宿主生物は家蚕(Bombyx.mori)を選択し、卵から人工飼料にて飼育した。
<植菌1>
増殖させたCordyceps militaris を、4齢の家蚕および家蚕の蛹(冷凍保存の後に解凍したしたもの)に塗布した後、培養した。
<植菌2>
Cordyceps militaris をおがくず培地に植菌して培養した。また、宿主となる家蚕の蛹(冷凍保存の後に解凍したしたもの)をCordyceps militaris を培養したPDA培地の上に置き感染させた。おがくず培地に感染させた家蚕の蛹を埋め、培養を開始した。培養の際には温度刺激を与えるために、培養温度は、初期は25℃とし、その後5℃→15℃→25℃のように変化させた。

結果および考察
 植菌1の実験では、家蚕が4齢時点で塗布したがそのまま成虫になった。菌には感染していると期待し、継続観察しているが子実体は見られていない。また、蛹も継続観察しているが同様に子実体の発生は見られていない。
植菌2の実験では、シメジ等の培養に用いられるおがくず培地を使用し、宿主の周りに Cordyceps militaris が多く存在する環境とした。また、子実体の発生促進の目的で温度刺激をあたえてみることとした。その際、秋から冬、冬から春をイメージして変化させたが、現段階で子実体の発生は見られない。
今後は光による刺激で検討していく予定である。また、これまでの試料についても継続観察を行っていく。継続観察の結果等については発表にて報告する。


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H-17
「センチュウ(C.エレガンス)による漢方薬の機能評価」

校名: 神奈川県立神奈川総合産業高等学校
発表者:小池 なるみ
共同研究:安田 佳代 (東海大学)、石井 直明 (東海大学)

要 旨:
《研究背景》
本校化学工学部では薬用植物の水耕栽培に挑戦しようとしている。栽培した薬用植物の効果は本校では評価困難であると考えられる。東海大学の石井らは C.エレガンスを用いて生薬の評価を行っている。センチュウの一種 C.エレガンス(Caenorhabditis elegans)は、最長寿命約30日というライフサイクルの短さから、老化と活性酵素の関連についての研究や分化の研究等に利用されてきた。尿でがん識別をする研究などでも注目されている。
 本研究では C.エレガンスを利用して、高等学校で可能な薬用植物の効果の簡易評価系確立を目指した。

《実験方法》
 三角フラスコ内の液体培地200mlに餌となる大腸菌を培養し、第一期幼虫の C.エレガンス(fer-15)約2,000匹を加えた。1/5、1/10、1/20に濃度を調整した葛根湯、大柴胡湯、パブロンを加え、25.5℃で振盪培養し、以下の2つの実験を行った。
〈系列Ⅰ,幼虫観察系〉
幼虫期のC.エレガンスの体長を測ることにより、各サンプルが C.エレガンスの成長に与える影響を調べた。
〈系列Ⅱ,長期培養系〉
各サンプルが C.エレガンスの寿命に与える影響を調べた。成虫になった C.エレガンス、また、それに熱ストレスを加え寿命を短くした場合の死亡率、生存率の測定、及び行動解析を行った。

《結果および考察》
 系列Ⅰでは、どのサンプルも濃度が濃いほど C.エレガンスの育ちが悪くなっていることから加えた薬剤が幼虫の生育に悪影響を与えていると考えられる。
 系列Ⅱでは、サンプルごとに大きく差が出た。葛根湯は生存率の大幅な変化は見られなかった。大柴胡湯は、一番濃度が低いサンプルが C.エレガンスの生存率を低下させている。しかし、幼虫の生育段階に問題はなく、動きが鈍くなったのも、死亡率が上がったのも日数が経過してからの事なので、長期培養することで影響が表れると考えられる。パブロンは、濃度が濃いほど生存率が低いが、大柴胡湯と同じく日数経過後は濃度の低いサンプルの生存率が低下している。

《今後の展望》
 各サンプルの結果にそれぞれ差が出たことより、高等学校での C.エレガンスを用いた漢方薬の評価は可能であると考えられる。


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H-18
「身の回りのアオカビを用いたペニシリンの抽出」

校名: 神奈川県立神奈川総合産業高等学校
発表者:坂本 綾香

要 旨:
(はじめに)
ペニシリンは世界初の抗生物質であり、ドラマ「JIN〜仁〜」により抽出実験が注目された。 文献を調査したところアオカビからペニシリンを得られた報告と得られなかった報告がみられた。そこで、ペニシリンの抽出実験に興味を持ち、挑戦することにした。いわゆるアオカビからペニシリンを抽出し抗菌性を確認すること、抽出条件が収量や活性に与える影響の検討を目指して実験を開始した。

(実験方法)
実験1 身の回りのアオカビからの抽出
 1. 身近な環境からいわゆるアオカビを採取、純粋培養した。
 2. アオカビを培養し培養液から菌体を分離後、活性炭を加えた。
 3. 酸処理をし、塩基性水溶液を加えた。
 4. 抽出液の活性を検定した。

実験2 ペニシリン産生株 (P. flavigenum 33246)での抽出実験
 実験1と同様の実験を行った。

実験3 ペニシリン産生株 (P. flavigenum 33246)での抗菌性の確認
 1. YS高栄養培地にペニシリン産生株を培養した。
 2. 検定菌 (K. rhizophila)をハートインヒュージョン液体培地で増殖させミューラーヒントン寒天培地で混釈した。
 3. 1で培養した菌体をくりぬき、2の培地に置いた。
 4. 室温で1週間培養後、抗菌性があるかを観察した。

(結果)
実験1では抽出液を滴下した部分にも菌の増殖が見られ、阻止円を確認することはできなかった。原因を明らかにするために実験2および3を行ったが、いずれの場合も阻止円を確認することができなかった。

(考察)
実験1の結果から次の3つの可能性を考えた。
1. 使用したアオカビにはペニシリンの生産能力が無い(身近な環境から採取した菌株であるため)
2. 抽出方法に問題がある
3. 抗菌性の評価方法に問題がある

そこでまず、ペニシリンの生産能が確認されているNBRC33246株を使用し実験2 および 3を行った。しかし、いずれも抗菌活性を確認することができなかった。実験3の結果からペニシリンが産生されていない、あるいは濃度が薄かった可能性を考えている。このことから培養条件を検討する必要もあるのではないかと考えている。

(展望)
まず、培養条件の最適化を行いペニシリンの生産を確認できる条件を確立したい。その後、抽出方法および検定方法などを改善していく予定である。今後の検討結果等については発表にて報告する予定である。


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H-19
「ハイドロゲル・二価イオンを利用したカプセルの実用化の研究」

校名: 神奈川県立平塚農業高等学校初声分校
発表者:蠣崎 由衣花、原田 亜樹、 川尻 萌花、 中島 拓杜

要 旨:
 私たちは、農業を学ぶ学生として、植物の種子の発芽、育成を植物にとって条件の良くない環境で実現させる方法の研究をしてきました。そして、高吸水性高分子化合物が活用できないかと発想し、様々な実験を続け、アルギン酸カルシウム膜の内部に架橋ポリアクリル酸重合体(ハイドロゲル)と二価鉄イオンを含ませたカプセルの開発に成功しました。これは、カプセルが水分や二価鉄イオンを吸収すると膨潤状態を維持し、内部の種子が育成困難な環境でも発芽、生育します。しかし、極度の乾燥状態に耐えるには改良が必要となり、発芽のタイミングをそろえる工夫も課題として残りました。今回は、新たな取り組みを計画し、この課題の解決に向けて取り組んでいきます。いろいろな経験を通して知見を得られましたのでここに発表します。


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H-20
「粘菌の発生に関する観察と胞子からの再生」

校名: 神奈川県立鶴見高等学校
発表者:野田 恒平

要 旨:
 2014年(平成26年)7月9日、自宅のベランダで青じそを育てていたプランターに、細胞性粘菌のススホコリが発生しました。ススホコリは、発生から子実体になるまでに約1日、移動距離は高さにすると約15㎝でした。
せっかくなので、ススホコリの胞子からススホコリを再生してみようと考えました。飼育法を調べてみると、寒天培地を使ってできると書いてありました。そこで、えさ(オートミール)を置いたり、水をあげないなど、11通りの方法を試し、そのうちの4つの寒天培地から変形体が発生しました。
この後も、変形体は子実体になり、そこから同じようなススホコリが発生しています。
これまでの実験・観察の報告と今後の課題について発表します。


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