学会会長からのご挨拶 - 失敗からも糧を得る! -

 海洋研究開発機構 (JAMSTEC) の会員は学術的に大きな貢献されてきましたが、微生物生態学会の大会がJAMSTECで開催されるは1985年の学会創立以来初めてです。横須賀大会では、サイエンスの面白さをアピールする企画や、ポスター賞受賞者による講演、学会そのもの論を議論する企画など、今までにない工夫がありますので、歴史的な大会になると大いに期待しております。

 微生物生態学は、地圏,水圏,大気圏にまたがる地球スケールでの微生物の多様性と物質循環、生命の発生と進化、生物間相互作用、微生物機能テクノロジー、食料生産など、広範な分野をまたがる学際領域です。私が強調したいことは、微生物の狩人である私たちの研究が生命科学・地球科学・環境科学に大きなインパクトを与え、それが逆に微生物生態学にフィードバックする研究の流れが今始まっています。モデル生物の生命科学・微生物抜きの地球科学や環境科学に微生物生態研究がリンクすることで新しい世界が見えています。

 微生物生態学会には若手も含めてフラットで自由闊達な雰囲気があります。このような皆さんの活力をもって、この間、種々のネットワークを張る努力をしてきました。一つは、環境微生物系学会合同大会(浜松、来年は仙台)や医学系微生物学会との共催シンポの開催を通じて、日本の微生物系学会を統合する流れを作りつつありますし、生命科学領域においても分子生物学会と生物化学会が提案する合同大会にも積極的参画しています。地球惑星連合とアジア微生物生態シンポも少しずつ前進しています。

 昨今の科学研究を取り巻く厳しい環境ですが、その時代にあった学会の姿は必ずあります。世界の研究動向・会員と社会の期待に耳を傾け、常に学会や学会誌あり方を議論することにより、微生物生態学会は会員や学生に魅力的な学会であり続けたいところです。また、楽しく研究と交流を行い、オープンマインドの姿勢で他学会や社会に発信していけば、微生物生態研究の輪が必ず広がるものと確信しています。斬新な企画がある横須賀大会ですが、実験と同じで、失敗からも糧を得ることができます。各企画について肯定的および否定的意見を遠慮なく学会に是非お寄せください。会員の方々のシビアな評価が学会を元気にしていきますので。

日本微生物生態学会会長 
  南澤 究(東北大学)