PC-046:腸内代謝産物から観るリグノセルロース分解機構のシロアリ種間比較
1熊本高等専門学校・生物化学システム工, 2理化学研究所・CSRS, 3東京工業大学・院生命理工, 4慶應義塾大学・先端研, 5理化学研究所・IMS
森林生態系でシロアリは、枯死木材を分解する代表的な生物として知られている。枯死木材は、樹種・腐朽・乾燥などの違いによって、木材を構成するリグノセルロースの状態も異なっている。この多様な状態の木材を、シロアリの全ての種が好んで分解するわけではなく、シロアリの種ごとに、食餌として利用する枯死木材には選択性がある。この選択性は、シロアリ自身による食餌の選り好みだけでなく、シロアリ種ごとに特異的な腸内共生微生物群の木質バイオマス分解機能にも依存していると考えられる。しかしながら、腸内共生微生物群による木質分解に関する代謝系は、リグノセルロースの複雑な構造も原因となり、不明確な部分が多く、枯死木材(木質バイオマス)の有用利用の視点から解明が望まれている。
本研究では、シロアリ腸内の代謝産物をシロアリ種間で比較し、シロアリ種ごとに特異的な代謝プロファイルを明らかにする事を試みた。具体的には、食餌とする木材状態が異なる日本産シロアリ7種; ヤマトシロアリ ( Reticulitermes speratus ) 、イエシロアリ ( Coptotermes formosanus ) 、タカサゴシロアリ ( Nasutitermes takasagoensis ) 、オオシロアリ ( Hodotermopsis sjostedti ) 、サツマシロアリ ( Glyptotermes satsumensis ) 、タイワンシロアリ ( Odontotermes formosanus ) 、コウシュンシロアリ ( Neotermes koshunensis ) に着目した。これらの腸内代謝産物プロファイルの比較から、シロアリ種ごとに保持する特異的なリグノセルロース分解に関与する代謝産物の抽出を試みた。自然界でシロアリが種ごとに異なる木材を餌とした生活環境で生育していた時に見られる腸内代謝産物プロファイルと、セルロースのみを餌として飼育した場合に観測される腸内代謝産物プロファイルとを比較した。さらに、検出された代謝産物のうち、同定できない未知の代謝産物も、新しい代謝経路の推測に役立つ可能性があることから解析対象として考慮した。得られたシロアリ種ごとのリグノセルロース代謝の特徴について議論したい。
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