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O12-09 : 多系統のシアノバクテリアからみえるクロロフィルfの誘導様式とエネルギー移動の共通性
Posted On 20 10月 2014
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1京大・院・人間・環境, 2埼玉大・院・理工
【背景と目的】我々は,琵琶湖沿岸の藻類マットからクロロフィルf(Chl f)を含むシアノバクテリア(藍藻と略記する)KC1株を分離し,Chl fが遠赤色光照射下で生育した細胞にのみ検出されること,天然および人工の藻類マットにおいて可視光が欠乏し遠赤色光が優勢になる層において検出されることなどを明らかにしてきた。現在,Chl f合成が藻類マット等の光遮蔽環境において生残するために獲得された補色適応であると考えている。本研究では,すでに我々が淡水や海洋環境から分離している多系統のChl f生産藍藻について,KC1株と同様の光条件でChl fが合成されるのか,またChl fが合成されることによって変化するエネルギー移動様式が共通しているか比較することを目的とした。 【方法】Chl f生産藍藻を、白色光(蛍光灯)と遠赤色光(LED:720 nmピーク,半値幅10 nm)照射下でそれぞれ3週間培養した。これらの細胞を用いて、HPLCによる色素組成分析,常温吸収スペクトル,77 Kでの低温蛍光スペクトルを測定した。 【結果と考察】いずれの藍藻においても遠赤色光下で培養した細胞にのみChl fが検出された。低温蛍光スペクトル測定では,遠赤色光下で培養した細胞には、白色光で培養した細胞に見られた730 nm付近の蛍光が見られず, 720 nm付近および740 nm付近の2つのピークが共通して見られた。これらのことは,Chl fの誘導様式ならびにエネルギー移動における役割が多系統に渡って共通していることを示した。
keywords:Cyanobacteria,Chlorophyll f,Complementary chromatic adaptation,,