PG-102:Acidobacteria門より初めて見出された新規水生植物成長促進細菌F183株の系統および生理機能の解析
1産総研・生物プロセス, 2山梨大院・医学工学総合, 3北大院・環境科学, 4阪大院・工
陸上植物は多様な植物成長促進細菌(plant growth promoting bacteria: PGPB)を根圏に擁していることが知られている。一方、陸上植物から進化して水中で生活するようになったと考えられている水生植物にも独自のPGPBが存在しうると考えられるが、既報の水生植物PGPBは1種(Acinetobacter calcoaceticus P23株)に留まり、その多様性や機能は殆ど解明されていない。本研究では、代表的な水生植物のウキクサよりAcidobacteria門に属する新規PGPBを発見し、その系統および生理性状解析を行ったので、その結果について報告する。
野生ウキクサの葉状体と根をそれぞれ超音波処理し、付着する微生物を剥離させて平板培地に塗布し、30 °Cで培養した。得られた分離株について、16S rRNA遺伝子配列に基づき分子系統学的解析を行うとともに、無菌ウキクサ類との共培養により植物成長促進効果を評価した。具体的には、分離株を無菌ウキクサと植物用無機培地で2週間共培養し、葉状体数が既存株(P23株)および無菌の対照区に比べ有為に増加するかどうかを判定した。
野生ウキクサの葉状体よりF183株を分離した。F183株はコウキクサの葉状体数を対照区に比べ約2倍増加させ、その効果は既存株を上回り、クロロフィル量の増加効果も高いことから、F183株はウキクサ類のPGPBであると考えられた。F183株の16S rRNA遺伝子配列(1423 bp)の相同性検索を行ったところ、F183株は最近縁標準種Paludibaculum fermentans(湿地由来の通性嫌気性細菌)と93.1%の相同性を示し、Acidobacteria門Subdivison 3 (‘Solibacteres’綱)に属する属レベルの新規細菌であった。Acidobacteria門は26亜科・綱からなる巨大な系統群で酸性土壌や鉱山排水など幅広い環境に分布するが、学名記載種は6亜科・綱16属30種と少なく、水生植物由来の分離株やPGPBの存在については未報告である。このように、F183株はAcidobacteria門で初めて見出されたPGPBであり、既知PGPBと系統が大きく異なることから、新しい植物成長促進メカニズムを持つのではないかと考えられる。
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