PF-081:富山大学屋上の大気中における細菌・真菌密度の定量とその季節変化
富山大・院・理工
【目 的】大気中には,細菌,真菌,花粉などの様々な生物粒子(バイオエアロゾル)が至る所に存在し、これらが生態系,人の健康,農業などに影響を及ぼすことが懸念されている。しかし,大気中の生物粒子の密度とその季節変化についての知見は不足している。そこで本研究では,富山大学屋上の大気中における細菌と真菌の密度を,リアルタイムPCR法,DAPI染色法,培養法を用いて測定し,その季節変化の把握を試みた。
【方 法】大気試料は,富山大学理学部屋上(地上12m)にて,2014年4月から2015年6月の間に毎月2回以上,孔径0.2μm のメンブレンフィルターを用いて,吸引流量10L/min で3時間の減圧濾過をして採取した。そのフィルターからDNAを抽出した後,全細菌数,Pseudomonas属細菌数,全真菌数の測定をTaqMan プローブ法を用いたリアルタイムPCRで行った。また,DAPI染色法を用いた蛍光顕微鏡下で全細菌数の測定も行った。さらに,培養法では,BioStage 200 Impactor (SKC社)を用いて,寒天培地上に形成されたコロニー数から培養可能な菌数を算出した。
【結果と考察】リアルタイムPCR法で細菌と真菌の定量を行ったところ,全細菌数は102 〜105 copies/m3 で,全真菌数は103 〜107 copies/m3 であった。また,全真菌数は,秋季に高い値を示した。Pseudmonas 属細菌数は、101 〜103 copies/m3 であった。DAPI染色法による全細菌数の測定結果は、104 〜106 cells/m3 であり,リアルタイムPCRの結果よりもやや高い値を示した。また,培養法による培養可能な細菌と真菌の菌数は,前述の方法で測定した全細菌数と全真菌数に比べて数桁低い値であった。さらに,いずれの定量法の結果も冬季に低い値を示し,季節変化が見られた。
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