PD-058:アナモックスリアクター内に共存する従属栄養細菌の活性及び細菌群集構造の安定性
東京農工大院・工
従来法にとって代わる新規な低コスト・省エネ型窒素除去技術として、アナモックスが注目されている。アナモックスを用いたプロセスの対象排水は有機物濃度が非常に低いため、従属栄養細菌の存在量が少ないと考えられてきたが、有機物を含まない条件でさえもアナモックス細菌と同程度の存在が確認され、従属栄養細菌がアナモックス細菌と共存してバイオリアクター内に棲息することが報告されている。しかし、共存する従属栄養細菌の活性や、生存戦略などの生理生態については未解明な点が存在する。そこで、本研究では、無機アンモニアを連続的に供給したアナモックスリアクター内に棲息する従属栄養細菌の脱窒活性、及び細菌群集構造の変遷を追跡した。これらの目的のため、上向流型連続式アナモックスリアクターを運転し、アナモックス細菌を集積させた。異なる運転時期において、15Nトレーサーを用いた回分活性試験を実施し、アナモックスおよび脱窒活性を定量的に評価した。具体的には、バイアル瓶にNH4+の存在下で15NO2-を添加し、ヘッドスペース中に生成されるアナモックス由来の29N2(14NH4+ + 15NO2- → 29N2)及び脱窒由来の30N2(15NO2- → 30N2)を四重極型GC/MSで測定することで、アナモックス活性及び脱窒活性を評価した。その結果、アナモックス活性は16.78-65.38 μmol-N2/g-VSS/h、従属栄養細菌の脱窒活性は1.449-2.436 μmol-N2/g-VSS/hの範囲であり、脱窒活性はアナモックス活性の3.7-8.6%であった。また、アナモックス活性と従属栄養細菌の脱窒活性は正の相関を示し、相乗的な効果がある可能性が示された。次に、共存する従属栄養細菌の同定のため、16S rRNA遺伝子のV7-V8領域(プライマー:1055f-1392r)のアンプリコンシーケンスを実施した結果、リアクター内には主に易分解性の有機物を資化するRhodocyclaceae科や、主に難・遅分解性の有機物を資化するChloroflexi門のS47科がそれぞれ8-17%、0.9-7.8%存在し、その相対存在量はリアクターの運転日数とともに変動するものの、アナモックス細菌と共に常に棲息していることが示された。今後は、リアクター負荷や酸素濃度の変動を導入し、これらの細菌群の消長について評価を行う。
keywords:アナモックス,従属栄養細菌,15Nトレーサー,次世代シーケンサー,機能遺伝子