JS13-4:有用細菌の資材化の試み
1片倉チッカリン株式会社, 2北海道農研セ
有用微生物を農業利用するこころみは古くから行われている。堆肥や有機質肥料の利用は栄養成分の供給だけでなく、土壌の理化学性の改善とともに、土壌微生物の働きを高める役割がある。このように土着の微生物が豊かになると、土壌の物理性が改善され、栄養成分の循環が起こり、根圏環境が改善される。また、微生物の分泌物が根の生長促進の刺激になるなど、健全な作物生産に大いに貢献していると考えられる。
有用微生物を資材化し、土壌へ施用することは、土壌の生物性の改善につながる。例えば、有機物の分解活性が高い微生物を、栽培後の残根・残渣を圃場へすき込むときに利用すると、それらが速やかに分解される。もし、羅病した野菜の根をすき込むときに用いれば、根を速やかに分解することで、病原菌の餌や住みかを減らし、次作の発病の可能性を軽減できる。また、病原菌の増殖を抑える微生物を土壌病害が発生しやすい圃場に施用すると、土壌の微生物相が良好になり、病害の発生しにくい土壌に改善することができる。
現在取り組んでいる農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(26065B)では、これまでに得られた細菌の内、各種作物に生育促進効果が認められたものを有用菌として選抜した。このようにして選抜した有用菌を農業現場で利活用するため、新規微生物資材のプロトタイプの開発に取り組んでいる。現在、選抜された有用菌の資材化適性を検討しており、生育促進効果があり、取り扱いがしやすく、保管性にすぐれた資材の開発を目指している。弊社ではこれまでにいくつかの微生物資材を開発してきた。資材化で困難な点は、微生物を安定して定着・維持することであるため、胞子などの耐久体を形成する微生物を選抜してきた。今回選抜された有用菌には、水分条件、保管条件が厳しく、菌密度の維持が困難なものが多かった。乾燥などへの耐性が小さく、保管温度の条件が厳しい場合、菌密度の維持が困難であるため、液状や凍結乾燥粉末状など、有用菌密度の維持の可能性について検討した。その中で、比較的乾燥に強い有用菌については、大量生産やハンドリング、保管に優れた資材を試作し、圃場試験に供試している。
本成果は農林水産省の「気候変動プロ」(2011〜2013年度)および「農食事業(26065B)」(2014年度〜)で得られた成果である。
keywords:有用細菌,資材化,生育促進