P25-23 : 菌根共生の祖先を探る ─ケカビ亜門に見る植物-菌類共生系の多様性─
Posted On 20 10月 2014
Comment: Off
1信州大・農, 2学振DC, 3筑波大・菅平, 日大・薬,
菌根共生は植物が土壌養分を獲得するうえで重要な役割を果たしており, 現存する陸上植物の約9割が菌根を形成する. また, およそ4億6千万年前に植物が陸上への進出を成し遂げた際には, 菌根共生が重要な役割を果たしたと考えられている. 分子系統学的知見や菌根の化石の形態などに基づき, このときに主役を演じた菌根菌はグロムス門に属するアーバスキュラー菌根菌(AMF)であると考えられていた.
しかし, Bidartondoら(2011)が苔類全般の共生菌を分子同定した結果は, 系統的に派生的な苔類(ゼニゴケ属等)がAMFとの共生を示した一方で, 原始的な苔類(コマチゴケ綱)は, AMFに先立って分岐した系統であるケカビ亜門(旧接合菌門)と特異的に共生していることを明らかにした. すなわち, AMFだけでなくケカビ亜門も菌根菌の祖先たり得たと考えられる. 現在では特に, ケカビ亜門のアツギケカビ目(Endogonales)および近縁群(Sphaerocreas属等)に菌根性種が含まれることがわかっている.
演者らは, ケカビ亜門における菌根共生系に関する知見の集積を目的に以下の実験を行なってきた:(1)アツギケカビ目と近縁群の分子系統解析, (2)Endogone属種(アツギケカビ目)のアカマツ実生への接種による菌根合成試験, (3)日本産コマチゴケに内生するケカビ亜門の同定および菌根構造の観察.
今回は上記の実験の結果明らかとなった, ケカビ亜門に含まれる菌根性系統群の多様性, ならびに各系統に対応する菌根の形態的特徴について報告する.
keywords:菌根共生,ケカビ亜門,,,