P23-9 : 有機養液栽培における硝化関連微生物群集の解析
Posted On 20 10月 2014
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1京都大学学際融合教育研究推進センター生理化学研究ユニット, 2京都大学大学院農学研究科発酵生理及び醸造学研究分野, 3慶應義塾大学理工学部生命情報学科, 富山県立大学生物工学研究センター, 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野菜病害虫・品質研究領域
有機溶液栽培は、環境負荷を低減し効率的な栽培を実現する水耕栽培として期待を集めている。本技術は、通気下で有機態窒素を硝化しうる微生物群を馴養する過程と、植物定植後に有機物の硝化と栽培を同時に行う栽培過程で構成される。本研究では、カツオの煮汁を有機物源に土壌を微生物源として硝化能が優れたものを選抜し、数回硝化を行わせることで安定した硝化能を示す微生物群集を集積した。また、栽培試験を行うことで、集積した硝化微生物群の有用性を確認した。続いて、硝化反応中の菌相の推移を PCR-DGGE法によって解析し、ゲノムシークエンスによる菌の簡易同定を行った。有機廃棄物としてのポリペプトン NF(0.5 g/L)、炭酸カルシウム(1 g/L)、微生物源としてのバーク堆肥(5 g/L)を含む溶液(20 mL)を試験管に分注し、28ºC、300 rpmで培養し、硝化を行わせた。随時、窒素動態を測定し、微生物群の回収、ゲノム抽出を行った。抽出したゲノムを対象に 16S rRNA V6-V8 領域、ならびに、アンモニア酸化菌群、亜硝酸酸化菌群、真核生物相に特異的なプライマーを利用してPCR-DGGE 解析を行い、各バンドに対応する遺伝子配列を解析して個々の菌の簡易的な同定を行った。硝化工程中の細菌相は、土壌の細菌相にくらべ単純化されており、一定の菌相に収斂していることが明らかになった。中でも硝化に関わる菌相は再現性良く、窒素動態と連動して推移していた。以上の結果より、有機養液栽培に有用な微生物群集が、PCR-DGGE 解析により確認された一般的な土壌細菌と硝化細菌により再構成できる可能性が示唆された。
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