持続的農業のための土壌病害研究シンポジウム開催のお知らせ(2015.11.05)
1)開催趣旨
これからの日本農業には減農薬を通した人間や環境に対する安全性の向上が強く求められている。また、国際競争力のある「攻めの農業」を展開するためにも、減農薬によるコスト削減を進める必要がある。特に有効な防除手段が少ない土壌病害については、上記のような要求を満たした上での早急な問題の解決が求められている。
減農薬・脱農薬のための技術開発の切り札として、有用微生物の機能を活用した病害防除研究が長年にわたり大きな期待を受けて行われてきたが、従来までの有用微生物・病原微生物・作物という単純な実験系からの解析・研究では実用化に耐え得る有用微生物の活用技術の開発は困難であった。一方、近年の研究から環境中の多様な微生物を網羅的に分析するための微生物の遺伝子解析技術が大きく進歩した結果、土壌や作物に生息する微生物の種類や量の詳細な分析が可能となり、農業環境中には未知の微生物が多数存在することが明らかにされた。さらに、従来の研究では大変困難だった圃場環境における多様な微生物間の相互作用や個々の微生物の生態(機能や行動)も解明され始め、農業や農学は従来までの経験的・試行錯誤的な段階から土壌微生物や植物共生微生物の分析に基づいた科学的な土作りの提案や、合理的な持続的農業技術の開発が可能な時代へと移行しつつある。
上記のような研究成果を応用すれば、農業環境中の病原微生物の診断やモニタリングが飛躍的に容易となり、疫学調査や動植物の病害防除のための農業環境の衛生管理体制の合理化(のための研究)も大きく進めることが可能である。実際に地理的に大規模なスケールでの土壌病害の診断や疫学的研究が既に国内外で実施され始めている。また、土壌や作物に生息する無数の微生物の中から有用微生物を迅速かつ効率的に探索・選抜することも可能となりつつあり、多数の新有用微生物も国内で報告され始めている。さらに、農業環境中での有用微生物の施用効果の向上や安定化に適した栽培条件(肥料や土壌改良資材等)についても解明が始まり、肥料や堆肥・土壌改良資材等を通した土壌病害の防除、さらには「おいしさ」の向上を目的とした「科学的な土作り」に関する研究も始まりつつある。
本シンポジウムでは、世界的にも重要な土壌病害の1つであるジャガイモそうか病を中心として、上述のような研究を活発に展開されている国内の中心的な科学者を招待し、土壌病害の診断や防除のための新しい技術の開発の現状や可能性について紹介して頂く。また、国内の土壌病害研究の現状や今後の見通しにおける、土壌微生物や植物共生微生物の研究の重要性についての議論の場としたい。同時に、内閣府の主催する戦略的イノベーション創造プログラム(「次世代農林水産業創造技術」・『持続可能な農業生産のための新たな総合的植物保護技術の開発』)における「ジャガイモそうか病防除のための新規栽培体系の開発」ユニットの研究成果の報告と情報収集、及び今後の日本における持続的農業の発展と国際競争力の強化に資することを目的とする。
2)開催日時 平成27年11月5日(木) 13:00~17:30(開場12:00~)
3)開催場所 長島町開発総合センター
(鹿児島県出水郡長島町鷹巣1877-3 電話:0996-86-1311)
4)第1部 招待講演
司会 鹿児島県農業開発総合センター・生産環境部長 鳥越博明
13:00~13:05
主催者挨拶
北海道農業研究センター・主任研究員 池田成志
13:05~13:10
共催者挨拶
長島町長 川添 健
13:10~13:15
来賓挨拶
鹿児島いずみ農業協同組合長 内村 正男
13:15~14:00
土壌病防除のための植物根・土壌の健全性診断法開発の試み
秋田県立大学生物資源科学部・教授 古屋廣光
14:00~14:45
ジャガイモそうか病の総合的防除法開発への挑戦~北海道網走での研究から~
東京農業大学生物産業学部・教授 吉田穂積
14:45~15:30
土壌中の微生物間ネットワークの理解と土壌評価法
鹿児島大学農学部・教授 境 雅夫
15:30~15:40
休憩
5)第2部 戦略的イノベーション創造プログラム
『持続可能な農業生産のための新たな総合的植物保護技術の開発』
「ジャガイモそうか病防除のための新規栽培体系の開発ユニット」成果報告
15:40~16:10
九州におけるジャガイモそうか病防除のための新規栽培体系の開発
鹿児島県農業開発総合センター・研究専門員 富濵 毅
16:10~16:30
北海道におけるジャガイモそうか病防除のための新規資材の探索
北海道農業研究センター・研究員 浅野賢治
16:30~16:50
有機物資源の循環を通した微生物制御による土壌病害防除技術の開発の試み
片倉チッカリン㈱・主任研究員 三星暢公
16:50~17:20
農業微生物研究からの自然共生型農業への展望-総合討議・質疑
片倉チッカリン㈱・技術顧問 野口勝憲
17:20~17:25
総括
秋田県立大学生物資源科学部・教授 古屋廣光
17:25~17:30
閉会の挨拶
鹿児島県農業開発総合センター・耕種部門・副所長 下西 恵
6)参集範囲
持続的農業・農業関連の環境問題に興味を有する市民・生産者、都道府県職員、市町村職員、農業団体職員、農業改良普及指導員、農林水産省、農林水産技術会議、公的機関及び民間の研究者等
7)シンポジウム参加費 無料
8)主催
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
9)共催
長島町(鹿児島県)
10)交流会
開催日時 平成27年11月5日(木) 18:30~20:30 会費5,000円
開催場所 あじろ旅館(長島町鷹巣1778 電話番号:0996-86-2222)
シンポジウム会場から徒歩5分
11)現地見学会
開催日時 平成27年11月6日(金) 8:30~12:30 会費無料
見学行程 8:30 長島町役場(鷹巣)駐車場発
8:50~9:10 針尾公園(長島町全景)
9:30~9:50 伊唐島バレイショ現地圃場
10:10~10:30 長島町内設置試験圃場
10:50~11:30 太陽の里(造形展)
11:45 長島町役場(鷹巣)駐車場着
12:30~ JR出水駅着
12)定員
シンポジウム250名
交流会100名
現地見学会80名
13)参加申込み 締切10月26日(月)
14)参加申込み・問い合わせ先
北農研・芽室研究拠点・大規模畑作研究領域・主任研究員・池田成志
TEL:0155-62-9276、FAX:0155-61-2127、E-mail:sikeda67@affrc.go.jp